その最大の理由は、医療機関で治療を受けなければ治らない(コントロールできない)疾患を発症していることが多いからです。
こんな事例があります。
25歳の男性Dさんが、「最近、汗をかく量が多くて……」と悩んでいて、汗の量を抑える薬を処方してほしいと、私の医院に来院されました。
問診をする中で、Dさんは「もし参考になるなら」とカバンから健康診断の結果表を取り出してくれたのですが、見ると、驚くべき数値が並んでいたのです。
結果表は図表(7)のようなものでした(一部のみ記載。単位省略)。
健康診断で「異常」と言われたにもかかわらず、忙しくて放置していたようです。一言でいうと、非常にやせ型のわりに上の血圧が高く、脈拍数も多い。一方で中性脂肪やLDLコレステロールが低いのも特徴です。
たしかに中性脂肪やLDLコレステロールの数値が低いのは、一般的に「良いこと」のように思えます。しかし、Dさんの場合は違ったのです。
Dさんは「バセドウ病」でした。
バセドウ病とは、甲状腺が脳の指令を無視して代謝を上げるホルモンを出しっぱなしにしてしまう病気です。過剰に代謝が上がるので、まるで常に運動しているかのような状態になり、脈拍が速く、汗の量も多く、いつも暑がり、疲れやすくなります。体内のコレステロールも消費されやすくなるので、数値として低くなる傾向があるのです。
バセドウ病を放置すると「甲状腺クリーゼ」という命に関わるような重篤な病気になることや、心不全や不整脈などを併発することもあります。一刻も早く治療を受けて、甲状腺ホルモンを安定させる必要があります。
若くても「異常」の放置は厳禁
私が診察した中でも、健康診断で少し気になる結果が出て、詳しく調べてみたら、実は重篤な病気だったという20代~30代の患者さんは意外に多くいます。
他にも以下のような事例がありました。
・「白血球数の数値が高い」と言われて受診したら、「白血病」だった
