――一見、意外な組み合わせに感じますが。

小島 日本の花火が持つ歴史や精神性をリサーチしていく中で、花火を打ち上げる目的として「鎮魂」があることや、もともと武家などが、余った大砲の火薬で花火を打ち上げていた、というルーツがあることを知りました。

 つまり、花火は戦争と密接な繋がりがある。実際に先の大戦では花火師が戦場に派遣されたという歴史的事実もありました。

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 舞台を現代にして、元自衛官が花火師になるというのはどうだろうか。例えば死んだ仲間を慰霊するというのは、ストーリーとして魅力的だなと。自衛官が戦闘に巻き込まれ、仲間が死んだとするならどうだろうか――と、どんどん構想を展開していきました。フィクションだからこそできるやり方で、人がどのように花火に向き合うかを描いてみたいと思ったわけです。

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実際の花火大会の打ち上げ現場で撮影

――花火と武器の火薬を結びつけるという設定は、協力された花火師の方々はどのように受け止められたのでしょうか。

小島 協力していただいた新潟の花火師さんは、企画意図を説明した段階で、「花火は火薬からできていて、危ないもの。美しい面と危ない面、その両側面を描くことは、花火師として非常にありがたい。作るべき作品だね」のようにおっしゃってくれました。

 全国で取材する中で、距離を置きたいという花火関係者の方もいましたが、新潟は火薬の歴史がすごく深いことや、今、花火師がどんどん少なくなっているという業界の厳しい状況もあり、この映画に賛同していただけた。花火の裏にある歴史やテーマ性が分かった上で花火を見ると、心に響くものが一段違う。そういうことを描けるのも映画ならではだね、と協力してくださいました。

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――撮影で大変だった点はどこでしょうか。

小島 難しかったのは、中盤の花火の打ち上げシーンです。実際の花火大会の普段は立ち入り禁止の打ち上げ現場で撮影したのですが、打ち上げは必ずしも事前に予定した順番通りに進まないんです。次に何が打ち上がるか分からないカオスな状況で、「とりあえず花火が上がったら撮影しよう」と。上がり方を見てその場で臨機応変に撮らなければいけない状況で、俳優もスタッフもよく対応してくれたと思います。