突如やってきた「コロナ渦」

 どこも正社員登用ありとなっていたけど、声が掛かったことは一度もなし。派遣仲間も同様で契約社員にすらなれないのが現実だった。派遣先の人たちとの関係は悪くなかったが、仕事や職場の人間関係に慣れた頃に別の会社に回されることがあり、また新たに関係を構築していくのが面倒くさいと思うことがあった。

「仕事の継続性、身分の保証、収入。どれをとっても正社員の方が良いわけだけど、年齢も40代半ば近くになっていたのでもう動かない方が得策かなと思いましたね」

 派遣で働きながらたまにハローワークで情報を集めたが、積極的にここで働きたい、この仕事をやってみたいというものは少なかった。

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写真はイメージ ©getty

「小さな印刷会社や食品会社の作業職、地域型スーパーの店員、介護職見習い、警備員、運転手。こういう求人は多いのだけど」

 賃金は派遣とほとんど同じ水準。これならオフィスワークの方が良いと思った。

 新型コロナが流行し始めた2020年の年初頃は飲食店チェーン本部の庶務課で事務仕事をしていたが、営業自粛や時短営業などの影響で業績が低迷。結果、非正規の派遣はいらないと雇止めになった。

次の記事に続く 「独身、子なし、非正規の中年女は“透明人間”」自分の居場所はどこにもない…50歳女性が嘆く「正社員ばかりを優遇する」社会のひずみ