「本当にクレイジーな夜だった。3本目のホームランの瞬間、歓声で球場が揺れたんだよ。観客たちは『目の前で歴史がつくられていく』って大興奮だったね」

 そう感慨深げに語るのは大リーグを30年以上取材してきた『USA Today』の名物記者ボブ・ナイチンゲール氏である。

シリーズMVPを獲得した大谷翔平

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ターニングポイントは試合の2日前

 大谷翔平(31)は10月17日(現地時間、以下同)、ナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦に「1番・投手兼指名打者」で先発出場。史上初の「1試合3本塁打&10奪三振」の大活躍で、チームを2年連続のワールドシリーズ進出に導き、シリーズMVPを獲得した。

 この試合前まで極度の打撃不振に陥っていた。ナイチンゲール氏が「ターニングポイントだった」と振り返るのが、試合2日前だ。

「翔平がドジャース移籍後、初めて屋外のグラウンドで打撃練習を行ったんだよ。試合で打席に入るときに使う登場曲『フィーリング・グッド』を流してもらい、リラックスした様子で打っていた。あれで良いときのスイングの感覚を取り戻したみたいだ。14本柵越えし、ライトスタンド最上部の屋根まで届いていたよ」

 迎えた17日の試合、初回に投手として3者連続三振を奪った直後にいきなり先頭打者ホームラン。さらに圧巻だったのは4回裏。飛距離約143メートルの場外ホームランを放った。

「同じ球場であれほどの飛距離の場外ホームランを打ったのは、73年のウィリー・スタージェル(ピッツバーグ・パイレーツ)以来かな。ポストシーズンでは左投手の厳しい内角攻めに苦戦していたから、あの打席では久しぶりに右投手と対戦して打ちやすかったのだと思う」(同前)

 

 投手として7回途中まで二安打無失点の快投。7回裏にはこの日3本目のホームランを叩き込んだ。

「前回登板から13日間空いたことで、打つだけでなく、投げる練習もできたのがよかった」(同前)