離婚会見でさえ爆笑に変えてしまう――。1980年代から平成、令和にかけて日本の笑いを牽引してきた明石家さんま(70)。その裏には、どんな苦境にも「笑い」で立ち向かう芸人魂があった。明石家さんまの芸人としての奥深さを、番組プロデューサーとして長年、公私にわたって親交を深めてきたTVプロデューサー・吉川圭三氏の新刊『人間・明石家さんま』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/最初から読む

明石家さんまさん(画像:時事通信)

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離婚会見も爆笑の場にする

 さんまはいかなる時でも、上機嫌に振る舞う。たとえ自分がどんな過酷な状況にあったとしても、それを表に出すことなく、白い歯を見せてカッカッカッと高笑いしてみせるのだ。

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 私が目にした中で一番印象的だったのが、1992年秋に放送された特番の楽屋でのやりとりだった。

 それは同年9月末、さんまが大竹しのぶと離婚会見をした直後のことだった。さんま・しのぶは共演した名作ドラマ「男女7人夏物語」(TBS系・1986年7月~9月)で出会い、その後1988年に結婚した。しかし、約4年後に結婚生活にピリオドを打つことになり、さんまは額に黒ペンで☓印(バツイチ)をつけて会見に臨んだ。マイクを向ける記者から笑いが起きるという珍しい離婚会見だった。

 それから1週間も経たない控え室でも、さんまは絶好調だった。楽屋で二人きりになったとき、衣装のタキシードに着替えながらこんなことを言って笑った。

「吉川くん、何があっても離婚なんてするもんやないで~。離婚っちゅうもんはものすごくエネルギーが吸い取られるんやで~」

写真はイメージ ©getty

 そんなことを言いながら、離婚会見の裏話を連発。「どう声をかければいいか」と意を決して楽屋の扉を叩いた私だったが、まったくの杞憂だった。爆笑楽屋トークは止まらない。