「さんまちゃん、あの人に言っちゃおうかな~」──海外のレストランで出会った年配ファンが、“芸能界のドン”の名前を持ち出して写真を迫ってきた。周囲が凍りつくなか、明石家さんま(70)が取ったのは、まさかの「対応」だった。長年の付き人でもあるテレビプロデューサー・吉川圭三氏が明かす、知られざる“人間・さんま”の素顔とは? 長年にわたり公私ともに交流を重ねてきたテレビプロデューサー・吉川圭三氏の新刊『人間・明石家さんま』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/続きを読む)
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苦手な相手にも神対応する
年末年始の恒例、オーストラリア旅行にご一緒させていただいたときも、さんま独特の振る舞いは一貫している。
毎年、フライト前の食事は、成田空港第二ターミナルのレストラン街の奥にある「信州そば処・そじ坊」で、みんなでそばをすするのがルーティンになっている。
一行が食べ終わって店を出ようとすると、白いエプロン姿の年配の女性従業員から「さんまさ~ん!」と声がかかる。するとさんまはニッコリ笑ってこう答える。
「おお、おばはん、元気やったか~! いつも白いエプロンが目に眩しいわ!」
彼女も覚えてもらっていたうえに、「愛あるツッコミ」を受けて大満足。
「うん、元気よ。やっとさんまさんに会えた~。年に一度の楽しみよ」
「ありがとう、もうちょっと話したいけど、そろそろ出発やねん。ほな、元気で。また来年な~」
彼女のほうも心得たもので、サインを求めたり、スマホで一緒に写真を撮ったりはしない。さんまには、こういう「馴染みの一般人」が至るところにいるが、どこでもいつでも相手のことを覚えている。そして、相手がうれしくなるような一言を投げかける。
誰にでもこのような自然体で接することができるのがすごいところだが、あえて言えば、「権威・立場を笠に着て威張る相手」のことはよしとしない。
非常に珍しいのだが、15年程前のオーストラリア旅行で「さんまが苦手とするタイプ」に出くわした。オーストラリア・ゴールドコーストの高級ホテルにある中華料理店に入ろうとしたときのことである。
見知らぬ日本人の年配の婦人がさんまに話しかけてきた。
