「健康は個人の責任で維持するもの」という欧米の考え

 イギリスにも日本のような健康診断はありません。

 イギリスは独特の医療制度になっていて、国民はどんな病気を発症したとしても、まずは「一般医(General Practitioner=GP)」と呼ばれる、かかりつけ医の診察を受けることになっています。たとえ深刻な病気の場合でも、専門医の診察や高度な検査を受けるためには、一般医からの紹介が必須であり、ある程度、緊急性の低いケースでは数カ月もの長さで診察を待たされることも珍しくありません。

 

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画像はイメージです  ©yuri_im/イメージマート

 それぞれの一般医が患者さんたちの健康を把握し、必要だと思った検査のみを受けさせるシステムになっているので、日本の健康診断のように全身を網羅する健診制度は存在しないのです。

 例外的に子宮頸がんや乳がんの検診など、費用対効果が証明された特定の病気に対するスクリーニング検査があるのみです。

 このようにアメリカやイギリスをはじめとする欧米では「健康は国や企業から与えられるものではなく、個人の責任で維持するもの」という考えが根強くあります。日本の健康診断は法律で義務付けられ、健康管理をするうえで必要な検査項目が費用の負担なく自動的に受けられるので、その点、かなり恵まれた環境にあると言えるでしょう。

伊藤大介(いとう・だいすけ)

1984年、岐阜県生まれ。東京大学医学部卒業後、同大医学部外科博士課程修了。肝胆膵の外科医を経て、その後、内科医・皮膚科医に転身。日本赤十字医療センターや公立昭和病院などを経て、2020年に一之江駅前ひまわり医院院長に就任。1日に約150人、年間3万人以上の患者を診察する。日本プライマリ・ケア連合学会認定医、同指導医、日本病院総合診療医学会認定医、マンモグラフィ読影医。2025 年に日本外科学会優秀論文賞を受賞。

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