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独裁者が辿る必然

 旧ソ連のヨシフ・スターリンや、ルーマニアのニコラエ・チャウシェスクといった稀代の独裁者たちは、いずれも「パラノイア(偏執病)」であったと言われる。

 パラノイアとは、強烈な不安や恐怖に苛まれる妄想性パーソナリティ障害の一種。症状としては、被害妄想や誇大妄想の他、自己中心的性格、激しい攻撃性などが挙げられる。

 チャウシェスクはまさに「猜疑心の塊」であった。暗殺や盗聴を極度に恐れた彼は、外遊中に使うホテルの客室の壁や天井はもちろん、家具や通風口の中まで徹底的に調べさせた。絨毯やバスタオルも念入りに消毒させた。

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 権力を握った者の猜疑心が増幅するのは、ヒトラーやスターリンにも見られた症状であり、独裁者が辿る必然なのかもしれない。

 そういった意味では、金正恩もこの例に漏れないのではないか。

 2013年12月、金正恩は自身の叔父にあたる側近の張成沢(チャンソンテク)を処刑。激しい拷問の末、数百発の機銃掃射を加え、火炎放射器で焼き殺したとも言われている。処刑の対象は張成沢だけでなく、その家族にまで及んだという話も伝わる。

©iStock.com

北朝鮮っぽい、独裁ジョーク

 ルーマニアと北朝鮮の繋がりで言うと、チャウシェスクが都市設計のモデルとしたのが平壌であった。1971年、平壌を訪問したチャウシェスクは、街並のすべてが金日成の栄誉を讃え、街そのものが統治者の所有物として存在しているシステムに感激。これと同じ風景を首都・ブカレストに再現しようとした。

 ちなみに、そんなチャウシェスクと親交が厚かったのが、イラクのサダム・フセイン。フセインはチャウシェスクの手法を学んだとされる。

 すなわち、北朝鮮の手法がルーマニアを経由して、イラクにまで連なった構図が見えてくる。

 悪縁契り深し、「独裁者の系譜」である。

●脳挫傷
 北朝鮮のとある収容所。朝鮮労働党の幹部たちが話していた。
「今日は3人の思想犯が死んだよ」
「へえ、どうして?」
「2人は毒キノコにあたって死んだ。残りの1人は脳挫傷が原因だ」
「脳挫傷? 何かあったのかい?」
「仕方ないさ。だって、あいつ、なかなかキノコを食べようとしないんだから」

●テレビ
問い・北朝鮮において、購入から10年経ったテレビは、修理する価値があるだろうか?
答え・ある。ただし、修理しても番組は変わらない。

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早坂 隆(著)

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