なぜこれほどノーベル平和賞を欲しがるのか?

 トランプ大統領が長年ノーベル平和賞を喉から手が出るほど欲しがってきたことは周知の事実だ。大統領第1期の2018年にはすでに「自分はこの栄誉に値する」「4、5回受賞できたはずだ」などと語っている。

 受賞を望む最も大きな理由は、トランプ大統領が一方的に敵とみなしてあらゆる批判、中傷を続けてきたバラク・オバマ元大統領が受賞していることへの嫉妬と思われる。

 トランプ大統領は昨年9月にも「オバマはノーベル平和賞を何もせずに受賞した」と口にしている。オバマ氏は就任からわずか9カ月目の2009年10月に受賞しており、理由は「国際外交と国民間の協力を強化するための並外れた努力に対して」という抽象的なものであったため、多くの人を不思議がらせたことは事実だ。

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バラク・オバマ元大統領 ©AFLO

 ちなみに歴代米国大統領で同賞を受賞しているのは、オバマ氏の他にジミー・カーター(2002)、ウッドロウ・ウィルソン(1919)、セオドア・ルーズベルト(1906)の3人。

 トランプ大統領の度重なる「ノーベル平和賞が欲しい」発言に、風刺画家のバンクスはノーベル委員会が「(トランプを怒らせるのが)面白いから、またオバマに出そう」と言うひとコマ漫画を発表し、SNSで大いに笑いを誘った。

ノーベル委員会が「(トランプを怒らせるのが)面白いから、またオバマに出そう」と言う風刺漫画(BanxのXより)

4~5月頃より、さらに頻繁に口にするように

 トランプ大統領は今年の4~5月頃よりノーベル平和賞についてさらに頻繁に口にするようになっていた。ワシントン・ポストは「誰もが私はノーベル平和賞を受賞すべきだと言っている」など、トランプ大統領の同賞についての複数の発言をつなぎ、コミカルなBGMをつけた動画を作成している。

 7月にはホワイトハウス報道官のキャロライン・レヴィット氏が定例記者会見において、「トランプ大統領は平均して月に1件の和平合意または停戦を仲介」、従って「ノーベル平和賞を受賞するのは遅すぎるほどだ」と発言。あからさまに賞を望むこと以上に、戦争や紛争を「平均して月に1件」と数えたことが視聴者を驚かせた。

22歳のグレタ氏に敵意をむき出しに…

 10月初頭、ガザ地区に支援物資を輸送するための船団に加わり、イスラエルの刑務所に拘束された気候変動活動家のグレタ・トゥーンベリ氏については連日、世界規模で大きく報道された。トゥーンベリ氏が10月6日に解放された時には「グレタにノーベル平和賞を!」という声がSNSで起こった。