10月28日の日米首脳会談で、高市早苗首相はトランプ米大統領を2026年のノーベル平和賞候補に推薦する意向を伝えたとされる。トランプ大統領はなぜこれほどノーベル平和賞を欲しがるのか。アメリカではどうみられているのか? ニューヨーク在住のライター・堂本かおる氏が寄稿した。 (全2回の2回目/はじめから読む)
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今年のノーベル平和賞の発表は10月10日だった。ベネズエラの野党リーダー、マリア・コリーナ・マチャド氏の受賞が発表されると、ホワイトハウスとMAGA(=熱心なトランプ支持者)は怒りを炸裂させた。
スティーヴン・チャン・ホワイトハウス広報部長は「ノーベル委員会は平和よりも政治を優先することを証明した」とポスト。ローラ・ルーマー(インフルエンサー、フォロワー183万人)は、ラテン系の女性が受賞したことを「アファーマティブ・アクション」と言い、受賞者を侮辱した。
「マリア・コリーナ・マチャド、泣きわめき続ける女がトランプ大統領よりも世界の平和に貢献したなんて考えられるか? まったくのお笑い草だ。トランプ大統領こそノーベル平和賞に値するのは周知の事実だ。またもやアファーマティブ・アクションの戯言だ」
「私は8つの戦争を収めた」
トランプ大統領自身は受賞者の発表後に「ノーベル賞についてどう思いますか」と質問した記者に対し、「私は8つの戦争を調停した」と言い、言外に「それなのに受賞できないのは不公平だ」というニュアンスをにじませた。
以前よりトランプは「7つの戦争」(セルビア/コソボ)(エジプト/エチオピア)(カンボジア/タイ)(インド/パキスタン)(イスラエル/イラン)(コンゴ民主共和国/ルワンダ)(アルメニア/アゼルバイジャン)を収めたと言い続けてきたが、10月9日のイスラエル/ハマスの和平合意後はガザ戦争を含めて「8つ」と言い換えるようになった。
トランプ大統領は記者に対し、受賞者のマチャド氏が電話をかけてきて『あなたは本当に受賞に値するので、あなたのために受賞します』と言ったと続けた。マチャド氏の言葉は、落選して怒り、落ち込むトランプ大統領の面目を多少は救ったのではないかと思われる。


