「あまりの怒りと狂気じみた様子だ」

 するとトランプ大統領はノーベル賞にこそ触れなかったものの、「彼女はただのトラブルメーカーだ」「怒りのコントロールができていない。医者に診てもらうべきだと思う」「若いのに、あまりの怒りと狂気じみた様子だ」と記者に語った。

 翌日、トゥーンベリ氏はトランプ大統領に対し、「あなたの輝かしい経歴から判断すると、あなたも同じように苦しんでいるようですから、いわゆる『怒りのコントロール問題』への対処法があれば、ぜひ教えてください」とSNSにてやり返した。ちなみにトランプ大統領は79歳、トゥーンベリ氏は22歳である。

スウェーデンの環境活動家・グレタ・トゥーンベリ氏(Xより)

国防総省を「戦争省」に

 8つの戦争を調停し、世界平和に貢献していると主張するトランプ大統領だが、現在、その言葉とは裏腹な軍事行動を展開中だ。

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 トランプ大統領は9月に国防総省を「戦争省」と呼び、ピート・ヘグセス国防長官に「戦争長官」を名乗るよう指示した。正式な名称変更には法改正が必要だが、第二次世界大戦後までは戦争省と呼ばれており、その時代に戻ろうというのだ。

 ヘグセス長官率いる戦争省は9月から10月にかけてカリブ海/南米沖で小型船舶を少なくとも14回攻撃し、60人近くを殺害している。トランプ大統領とヘグセス長官は、これらの船は米国への麻薬輸送に関与していたとしているが、証拠は示されていない。そもそもこの地域で密売されている麻薬の中ではコカインが最も多く、トランプ大統領の「フェンタニルの拡散から米国民を守る」という主張と相容れない。

「Secretary of War(戦争長官)」と名乗るヘグセス長官(Xより)

 しかし、議会の承認が不要な60日間の攻撃期間が終わろうとしている今、トランプ政権は議会の承認は不要と主張し、かつベネズエラ領土への攻撃の可能性すら示唆している。さらに11月になるとナイジェリアへの軍事介入の可能性も口にし始めた。

 また、論争的な人物であるマリア・コリーナ・マチャド氏の受賞を訝る声も多かった。中にはトランプ大統領に出すわけにはいかず、しかし受賞者によってはトランプ大統領が一層怒るであろう、そこで委員会は親トランプ派のマチャド氏に出し、なんとか丸く収めようとしたのではないかという推測もあった。

2025年1月20日、大統領就任式でのドナルド・トランプ ©EPA=時事

 いずれにしても、ノーベル平和賞の推薦はその年の1月で締め切られるため、高市首相の推薦は今年の受賞には結び付かなかったが、来年の選定には有効だ。高市首相の推薦は、果たして2026年のトランプ受賞に貢献するのだろうか。

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