日本人では7年ぶりにノーベル生理学・医学賞を受賞した大阪大学の坂口志文特任教授(74)が、月刊「文藝春秋」のインタビューに応じ、「制御性T細胞」発見まで約20年にわたって続いた孤独な戦いについて明かした。

ノーベル生理学・医学賞を受賞した大阪大学の坂口志文氏 ©文藝春秋

 坂口氏は今年、免疫のブレーキ役となる「制御性T細胞」を発見したことでノーベル賞を受賞。体内の免疫細胞が過剰に働いて正常な細胞や組織を攻撃することを抑えるこの細胞の研究は、関節リウマチや一型糖尿病などの自己免疫疾患から、アレルギー、さらにはがん治療への応用も期待される注目の分野だ。

授賞理由となった「制御性T細胞」 ©AFLO

抄録だけ提出して現地に行かず…ついたあだ名は『ファントム(幽霊)』

 しかし、現在は常識になっているという、この「免疫反応を抑える免疫細胞」の研究は検証する技術が追いつかず、なかなか実態が客観的にわからなかった。それゆえ、次第に下火になり、当時の本流の研究ではなかったことで、研究費の獲得や節約に苦労したという。

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「アメリカで研究している頃、私の研究に興味をもってくれた研究者はヨーロッパに多かった。でも、学会に行くとお金がかかる。だから、学会には『こういう研究をしていますよ』という抄録だけ提出して、現地に行かないという横着をしていました。いつしかついたあだ名は『ファントム(幽霊)』。論文は出てくるけど、本人を誰も見たことがない幽霊みたいなやつだというんですね(笑)」(坂口氏)

「珍しい」研究歴だからか、より年齢に驚かれることもあるという ©文藝春秋

 大学院を中退し、愛知県がんセンターで無給の研究生として出発した若き日、医者を辞めて研究を支えた妻との関係、ノーベル賞受賞者からぶつけられた強烈な批判など、語りおろした8ページにわたる全文は、11月10日(月)発売の「文藝春秋」12月号に掲載されている(月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」では11月9日から先行公開)。

文藝春秋

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ユーレイ学者から高齢者希望の星へ

出典元

文藝春秋

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