スウェーデン王立科学アカデミーからノーベル化学賞を受けた北川進・京都大学特別教授(74)が、「文藝春秋」12月号でインタビューに応じた。

ノーベル化学賞を受賞した北川進氏 ©文藝春秋

 目に見えない微細な孔を無数に持ち、特定の気体などを効率よく貯蔵・分離できる高機能な多孔性材料「金属有機構造体」の開発が評価されて受賞に至った北川氏。受賞後の記者会見で「空気は目に見えない金」「気体に期待してください」とユーモアを交えた発言で会場を沸かせた。

研究室に置かれていた「多孔性材料」の模型 ©文藝春秋

実験の「失敗」から発見…当初は批判され悔しさも

 発見のきっかけは、実験の「失敗」。密に詰まった結晶を作ろうとしたところ、解析をしていた学生から「これ、孔が開いていますよ」と指摘され、「これを機に、密な材料から孔の開いた材料研究に舵を切りました」(北川氏)。

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 だが、当初は「こんな孔の開いた材料を作ってもうまく扱えない」と批判され、講演をしたところ、ある学界の長老からドンと肩をぶつけられたこともあるという。

 中でも忘れられないのが、由緒ある国際会議・ゴードン会議に招かれて講演した1997年のことだった。

「質疑応答の時間に『そんなものは不安定で存在するはずがない』『解析が間違っている』などと次々と批判を浴びました。完全に狼狽して、途中から英語が頭に入ってこなくなったくらいです。

 他の参加者はロッジで寝泊まりするのですが、僕は開催日ギリギリまで予約しなかったせいで、屋根裏部屋をあてがわれました。夏でも涼しい気候の地域でしたが、その年はなぜか暑く、悔しさがこみ上げて汗か涙か分からないものを流しました」(北川氏)

研究室にも本がズラリ。でも「少し前に蔵書を減らしたら、こういうインタビューで急に昔の本を探すことが増えた」と苦笑いする北川氏 ©文藝春秋

 その後、次第に研究が認められるようになり、1年間に何千もの関連研究の論文が出るようになった多孔性材料。11月10日(月)発売の「文藝春秋」12月号では、その発見の端緒となった「失敗」を発見の契機にできた理由、研究を応用した企業「アトミス」がインドネシアで進める高圧ガス容器の実証実験や、壮大なエネルギー革命のビジョンまで、8ページにわたって掲載されている(月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」では11月9日に先行公開)。

文藝春秋

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3つの言葉が発見につながった

出典元

文藝春秋

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