東海3県を中心に障害者グループホームや訪問看護事業を展開するビジョナリー(名古屋市)は、“日本一マッチョが多い介護の会社”として知られる。
同社の丹羽悠介社長は「マッチョの楽園を作りたい」と公言し、ボディビル実業団チーム「7SEAS」も運営。同チームに所属する社員には、勤務時間内に2時間までの筋トレを認め、プロテイン代を支給するなど、マッチョが喜ぶ福利厚生を揃えている。
人手不足に悩む介護業界にあって、もともと全く人が集まらず苦労していたという同社。いったいなぜ、マッチョに注目したのか。
年間で1~2人しか、人が集まらなかった
ビジョナリーがマッチョ採用を始めた背景には、深刻な人手不足があった。「求人サイトで一番大きい広告を出しても問い合わせすらゼロでしたから、友達に声をかけまくるしかなくて、年間で1~2人採用できれば良い、そんなレベルでした」と丹羽社長は当時を振り返る。
突破口となったのは、若者を対象にしたアンケート調査だった。「8割が『やりたいことは特にないけど、人間関係が良く、同世代が多い楽しそうな職場で働きたい』と答えていました」。そこで丹羽社長は、仕事内容ではなく「別のところで自然に触れてもらう導線」を作ることを決意する。
実業団の構想が生まれたのはこの時だ。サッカーや格闘技も検討したが、費用や人数の問題、イメージの問題があった。「じゃあどうするかと考えた時に、僕自身が筋トレをしていたので『マッチョの実業団は聞いたことないけど、おもしろいな』と思ったんです」。
マッチョはとにかく目立つし、介護とも相性抜群
マッチョを選んだ理由は明確だった。「とにかくSNSで目に留まる。あとは、格闘家だと写真で見ても強いかどうかわかりづらいですが、マッチョの場合は身体を見れば、『すごい努力家だ』とひと目でわかります」。マッチョを看板にして、興味を持ってもらう。そして、介護の現場も見てもらえば、仕事の魅力が伝わる――そう考えた。
結果は劇的だった。年間1~2人だった採用数が、応募数1000件、採用数100人超にまで拡大。その中で日頃からトレーニングしているマッチョ人材は2割ほどだが、20~30代の若い層からの応募が大幅に増えた。
丹羽社長は「マッチョは介護の仕事自体とも相性が良い」と話す。
「やっぱり、パワーがあるので頼られやすいですよね。利用者様を車椅子からベッドに移動させるなど、パワーが求められる場面も多いので。利用者様からしても体が細い年配の介護士より、若いマッチョの方があれこれ頼みやすいはずです」
介護は地道な仕事が多いが、マッチョは同じトレーニング、食事を継続できる能力が高い。その点でも、相性が良いという。
「マッチョの楽園」を作るという一見突飛なアイデアは、若者が介護の仕事に触れるきっかけを生み出し、人手不足という業界の課題に真正面から立ち向かう試みとなった。その成功は、採用の常識を覆す可能性を秘めている。
「マッチョの楽園」を目指している同社の驚愕の福利厚生・労働環境や、実際に働くマッチョ人材の声、さらに今年から始めた企業とマッチョ人材のドラフト会議の狙いなど、インタビュー全文は下記よりお読みいただけます。

