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ファンタジーな紙面作りに貢献してくれた思い出

 高卒1年目から遼馬を取材してきた。原稿を書く際には「未来の守護神」や「160キロ」というフレーズを使って、1人、ワクワクしながらキーボードを叩いた。打ち込む言葉1つ1つに記者の強い思いを込めることができる選手だった。

 初めて食事に行った時「僕、田舎で育ったのに虫とか、魚が触れないんですよ……」と言いながら、サーモンの握りを頬張っていたことを思い出す。専門家に「右足の外反母趾を治せば球速がアップする」という助言を受けたことを知って、私が100円ショップで購入したビーチサンダルを嫌な顔ひとつせず履いて「夢の160キロへビーチサンダルトレ!」というファンタジーな紙面作りに貢献してくれたことも忘れない。

サンダル ©スポーツニッポン

 昨冬には「家の空調が全く効かなくて、寒いんです。凍えながら寝てますよ」と引っ越しを検討していたところで、期せずして住まいが変わることになった。トレードの一報には驚いたし、寂しい思いもあったが、そんなことも思い出した。

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 惜別の原稿に、あえてケガのことばかりを書いた。遼馬を迎えるソフトバンク関係者、ファンの方はどうか、気を悪くしないで欲しい。故障を経験して以来、ケアの重要性を知り、毎朝の長風呂は欠かせなくなった。ナイターでも、試合後は寮にあるトレーニングルームで黙々とバイクをこいだ。新天地では故障と無縁であって欲しい……。ここで“膿”を出し切ることを願って、間近で見てきた苦闘を記した。今は、松田遼馬のプロ人生のキャリアがトレードを機に、さん然と輝くことを、ただ願っている。

遠藤礼(スポーツニッポン)

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