「いわゆるZ世代ですね。実際に若者たちから聞いてるんですけど、私の親世代くらいを見て『いいな』と思っているんですよ。いい額の年金をもらって暮らしているわけですから。でも自分は同じくらい働いたとしても、もっと働いたとしても、同じ富はもうゲットできないんです」
コロナ禍が若者に与えた影響
柳原さんが指摘するのはコロナ禍の影響だ。
「個人的にはかなりコロナ禍の影響を重視している」と前置きした上で、その理由を説明する。
「コロナ禍では、管理する権力の存在が大きくなった。つまり行政が命令して、外に出てはだめですとか、移動してはだめですということを権力が管理した。若者たちは2、3年間それに直撃してるわけです」
この体験が若者たちに与えた影響は深刻だった。
「例えば今ドイツで独裁的な権力者がトップに立った方がいいか、というアンケート取ると、7%くらいの人が賛成です。メルツより独裁的な人がいい、と」
さらに重要なのは、コロナ禍による人間関係の変化だ。
「社会全体が人と触れてはいけないとか、この人はもしかしたらコロナ感染者じゃないかと思っていい社会でした。疑いを持つ前提でした。
ドイツ語でフレムトって言うんですけど、英語ではストレンジャーですね。ストレンジャーに対して、この人はやばいんじゃないかとか、感染してるんじゃないか、と疑いを持つ意識が、あの時に一気に広まった」
「いい暮らしをして、将来が安定している大人たちが…」
この変化は教育現場にも及んでいる。マライさんは親戚から聞いた話として、模擬選挙の結果を紹介する。
「大人たちが『こう入れて欲しい』っていうのを子どもたちは感じるらしいんですよ。その反発なのか、模擬選挙でものすごくAfDが伸びたそうです。とても人気だった」
「いい暮らしをして、将来が安定している大人たちが、私たちにこうして欲しいらしいだけど、嫌だ」という反発が、若者たちの政治意識に影響を与えているという。
コロナ禍という未曾有の体験が、ドイツの若者たちの政治意識を根本的に変えた可能性がある。管理権力への慣れ、他者への警戒心の定着、そして上の世代に対する反発——これらが複合的に作用した結果が、現在の極端化現象かもしれない。
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