杏子がいちばんハンサムであってほしい
──監督や原作者の百世(渡)さんからはどのようなリクエストや演出があったのですか。
上白石 百世さんからは、最初にお会いした時に「杏子がいちばんハンサムであってほしい」と言われました。本作では見目麗しいイケメンが数多く登場するのですが、「ビジュアルでもマインドでも、杏子がいちばんしなやかでハンサムであってほしい」と言っていただいたので、かっこよく存在できるように、常に意識していました。
──アクションも、すごくかっこよかったです。相当練習されたのではないでしょうか。
上白石 ありがとうございます。これまで、ほとんどアクション経験がなかったので、アクションシーンは大きなプレッシャーでした。最初にお手本を見せていただいた時は、「できるわけがない」と、頭が真っ白になったくらいです。
でも、アクション部のみなさんに毎日熱心にお稽古をつけていただくうちに、少しずつできるようになってきて。撮影が終わった後も居残りして練習したり、自宅でモップの柄を代用して練習したりして、棒を振り回す練習をしました。普段使わない筋肉を動かしたので、体のあちこちを傷めながら、満身創痍で撮影に挑みました(笑)。
撮影が終わった時はぶっ倒れるんじゃないか
──まさに、自分の意志とは関係なく恋愛をしなくてはいけなくなった杏子と同じ状況ですね。
上白石 そうですね、毎日が山場でした。でも、目の前に現れるアクション課題をどんどんこなしていく日々は、次々と現れる刺客をなぎ倒していく杏子のようで、楽しみながら挑戦できました。
撮影が終わった時はぶっ倒れるんじゃないかという疲労感がありましたが、それこそがリアルな杏子の気持ちなのではと思えて、逆にやりがいを感じました。
──修業のように過酷な撮影現場だったのですね。
上白石 いえいえ(笑)。英監督が太陽みたいに明るく現場を照らしてくださる方なので、現場の空気が重いと感じる日は1日もありませんでした。
何より、同世代の共演者のみなさんの存在にも助けていただきました。私、香月(司)くん役の高橋(恭平)さんとは、生年月日がまったく一緒なんです。共演が決まった際に調べて知り、すごく運命的なものを感じていたのですが、同じ誕生日でもこんなに違うのかと思うほど性格が対照的で、それも発見でした。クールに見えてすごく盛り上げ上手な方で、現場のムードメーカーとして、すごく頼りになりました。
現場の盛り上げと言えば、撮影時に私が空中を歩いているように見える“空中ウォーク”にはまっていて、それを流行らせたこともあったんです。みなさんダンスがすごくお上手な方ばかりなのに、なぜか一番下手な私が先生のようにみなさんに教えていたのが、今思うと不思議です(笑)。

