「(サトルさんは)いつも概ね宿題を提出していた。しかし、このときは明らかに他の生徒よりも提出してない。ただ、宿題をしていないのか、していて忘れただけなのかは確認してない。大声を出したのは、(遊んでしまったという)夏休みの過ごし方について気になったから。学活で書いた『ワークシート』では、クラスの(1日あたりの勉強時間の)平均は6時間、サトルさんは『2時間』だった。本人も『勉強をあまりしなかった』と言っていた。(大声の叱責が)有効かどうかを考えていないが、明らかに勉強に向かっていないということについて自覚させるためだった」
この時のZ教諭の声量は校舎の外にいた他の生徒にまで聞こえるほどのものだったという。大声で叱責する負荷によって生徒に影響を与えようとしていた意図は認めているが、Z教諭はあくまでも教育のためだと主張した。
「小さい声でも指導できるが、私は真剣に向き合っている姿を見せることが大事であり、それが毅然とした指導だと思っていた。きょうの尋問に答えている声量が『1』としたら、『どうも思わないのね!』と言ったところが自分の中で一番大きかった。10段階のうち『7』から『8』だった」
Z教諭が陳述書の中で認めていたのは、サトルさんに宿題を提出できなかった理由などについて丁寧に聞きとりを行わなかった、という点だ。
「指導後に職員会議があるので、急がないといけなかった。十分聞き取るべきだった」
サトルさんは涙を流していたが「追い詰めるほどではない」
Z教諭による指導中、サトルさんは涙を流していたという。しかしそれを目の当たりにしても、Z教諭は自分が15歳の男子を追い詰めた可能性はあくまでも否定した。
「びっくりした。泣いたのは、進路指導と宿題未提出の指導とで雰囲気が違ったからではないか。それと強い指導があったからではないか。ただ、追い詰めるほどではない」
指導はその後、未提出の宿題とは無関係の志望校の話に移った。その理由をこう語っている。
「第一志望の高校に『行きたい気持ちがあるのでしょ?』と言った。受験に迷いが出たと思い、それ以外の進学希望の高校名をあげさせた。そのため、まだ進路は迷っていいこと、相談していいこと、宿題の未提出はいけないこと、2学期も頑張りなさい、ということを伝えた」
自殺の要因として「進路」はかなり多い理由である。宿題についての叱責の後に出す話題として適切だったかどうかは疑問だ。

