今回の件は「高市らしさ」が各所でポイントになっていないだろうか。首相はペン入れなどの時間もあって午前3時からの勉強会になったのだろう。自分の言葉で答えようという姿勢は好感が持てる。しかし波紋を呼ぶような事態になってしまった。昔から政策勉強はひとりで抱え込むほど熱心だというが、ある程度は周囲に耳を傾けたり任せたりする「首相の働き方」も必要に思えてくる。さらには周囲の働き方の問題だ。つまりワークライフバランスである。あれは本当に大事な言葉だった。

今回のような「高市有事」は頻繁に起きるのではないか

「午前3時からの勉強会」が報道されると自民党の国光文乃外務副大臣は、首相の勉強会が未明になった一因は野党の質問通告が遅いためだと発信した。そのあと木原稔官房長官は記者会見で「事実誤認であったことから、国光氏に注意した」と語った。

高市内閣 ©時事通信社

 問題の本質はどこにあるのだろう。日経新聞は「2日前」通告が高い目標となる背景に委員会の日程の決定が遅いことを挙げていた。与野党から委員会日程の決定を早めるべきだとの声があると。こういう話なのだろうが、いつの間にか「誰かが誰かに意地悪をしている」という単純な構図になっていた。

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 これに似たのが今回の台湾有事答弁だ。そんなことをしつこく聞く側が悪いという声もSNS等でよく見る。しかし国会論戦とはもっと面白いものだ。質問する側からすれば曖昧な存立危機事態について聞くのは当たり前であり、答える側からすればいかに具体例を出さないかというのも当たり前である。このせめぎ合いや個人差が見どころだったりする。答え方で現首相のキャラクターや思惑も見えてくる。高市首相は持論を封印して終わった石破政権と同じ轍を踏まぬよう自分らしさを出したいのだろう。だが高市らしさがいろいろ出すぎると今回のような「高市有事」は頻繁に起きるのではないか。

 実はあの答弁と同じ日、高市氏は「村山談話」などの歴史認識を「引き継いでいく」と発言していた。もっと注目されるべきだ。支持者は驚いただろうがこうしたバランスは必要ではないか。高市氏は首相就任前に支持者に言っていたこととの整合性を常に気にしているかもしれない。村山談話踏襲もひやひやしていたのかも。応援する側も過剰なわかりやすさを求めすぎると贔屓の引き倒しになってしまいかねない。今回の件で痛感したことである。

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