台湾有事を巡る高市早苗総理の答弁に対して、中国の駐大阪総領事・薛剣氏が「汚い首は斬ってやるしかない」などと反応したことが物議を醸している。ただ、薛剣氏の挑発的な発言は今に始まったことではない。暴言連発の裏側を、2021年に安田峰俊氏が掘り下げていた。

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人権団体を「害虫」呼ばわり

 近年の中国を象徴する「戦狼外交」をご存知だろうか。中国の外交官が挑発的・攻撃的な言動を繰り返す現象のことで、米中対立の激化とともに顕在化した。「中華民族の偉大なる復興」を掲げる習近平のもと、外交官たちは政権に忖度し、ことさら教条主義的な姿勢を示すようになった。

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中国の駐大阪総領事・薛剣氏。高市早苗総理に対して「汚い首は斬ってやる」などとSNSでの発言が大問題に発展。しかし、薛剣氏の暴言は今に始まったことではない ©ABACA PRESS/時事通信フォト

 戦狼外交は、中国発のコロナ禍が全世界に広がり、新疆ウイグル自治区や香港の人権問題に国際的な非難が強まった2020年から加速。同年3月には中国外交部の趙立堅報道官が、新型コロナの起源は米国にあると主張して米高官を激怒させた。

 他にも外交部次官補の華春瑩(ホア・チュンイン)、前駐英大使の劉暁明(リュウ・シャオミン)らが「戦狼」として知られる。そして最近、ついに日本の中国公館にも同様の外交官が登場しはじめた。

「害虫駆除!!!快適性が最高の出来事また一つ」

 国際人権団体アムネスティの香港からの撤退が報じられた翌日の2021年10月26日、中国駐大阪総領事の薛剣(シュエ・ジエン、@xuejianosaka)がツイッターに投稿した一文だ。

 彼は同年6月に着任し、8月11日にアカウントを開設。以来、中国の体制を礼賛し、西側の民主主義や人権概念を強烈に批判し続けている。現役の総領事が人権団体を「害虫」と呼んだことは国内外の非難を招いたが、その後も“口撃”は続いた。

「台湾独立=戦争。はっきり言っておく!中国には妥協の余地ゼロ」〔10・28〕
(台湾外相の発言に)

「平和解放前のチベット最大の農奴主」〔11・10〕
(ノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマ14世について)

「過激な反中マインドに駆られているこのマスゴミが益々発狂!!!」〔11・13〕
(日本のネットニュースの中国批判記事に対して)

「ハエがウンコに飛びつこうとする西側子分政治家」〔11・21〕
(五輪ボイコットに言及した国民民主党の玉木雄一郎代表を指して)