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いまこそ「台湾有事2027年説」を検証する 米軍が抱く危機感の核心とは?

いまこそ「台湾有事2027年説」を検証する 米軍が抱く危機感の核心とは?

2023/07/14

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース, 社会, 政治, 国際, 中国

前テレビ朝日ワシントン支局長の布施哲氏による「検証『2027年台湾有事』」を一部転載します(「文藝春秋 電子版」オリジナル記事)。

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米軍を狙うサイバー攻撃

「2021年半ばから中国がグアムの通信インフラに密かにマルウェアを仕込んでいたことを確認した」「その目的は将来、紛争が起きた時に米国とアジアとの連絡を遮断することにある」。

 5月24日、米マイクロソフトは中国政府の支援を受けたハッカーグループがグアムをはじめとする米国のインフラ基盤に浸透していたことを明らかにした。

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 マイクロソフトと聞くと一般読者はワードやエクセルを思い浮かべるかもしれないが、米軍のサイバー作戦を事実上、支えている存在で、ウクライナ紛争でも世界に先駆けていち早くロシアがウクライナ国内にマルウェアを埋め込んでいた事実を明らかにしている。

 この発表で注目を浴びたのはグアムがターゲットになっていることだった。

グアム基地 ©AFP=時事

 グアムは米軍の原子力空母やステルス爆撃機、攻撃型原子力潜水艦などが拠点とするアジアにおける米軍の一大ハブだ。台湾有事がひとたび起きれば、米軍の集結拠点、出撃拠点として決定的な役割を果たす戦略的要衝だ。真っ先にミサイル攻撃やサイバー攻撃のターゲットになるという点でも日米の安全保障専門家の見方は一致する。

 そのグアムに中国政府の支援を受けたハッカーグループが有事の際に妨害行為をおこなうマルウェアを通信インフラに仕込んでいたとするマイクロソフトの発表は台湾有事をみすえて米中がせめぎあう現実を裏付けた形となった。

 注目すべきはこのハッカーグループによる浸透工作が2021年半に始まった点だ。2021年前半にあった「あの発言」以降、米国では台湾有事がリアリティを持って語られるようになった。そして中国のハッカーグループが動き出したのはその発言の3か月後ということになる。中国もまたあの発言に刺激されて動き出したのか——。

「2027年台湾有事説」の号砲

「台湾への侵攻は今後6年間に顕在化する」

 2021年3月の米国議会公聴会。

 発言の主は米インド太平洋軍司令部のデビッドソン司令官(当時)だった。

 この発言をきっかけに「(発言があった2021年から6年後の)2027年、あるいはそれ以降に台湾有事のリスクが高まる」という議論が米ワシントンでは吹き荒れることになり、台湾有事2027年説は「デビッドソン・タイムライン」とも呼ばれるようになった。