石原慎太郎氏のベストセラー『スパルタ教育』には、「子どもをなぐることを恐れるな」「不良性の芽をつむな」といった過激な教えが並ぶ。では、実際にその教育を受けた子どもたちはどう育ったのか。三男・石原宏高氏が「父の教育」を振り返る。
四兄弟がそれぞれの視点で家族の思い出を綴ったエッセイ集『石原家の兄弟』(新潮社)より一部を抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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コツコツ型の自分を認めてくれた父
石原家の教えと言われて誰もが思い浮かべるのは、父の著書『スパルタ教育』だろう。
『スパルタ教育』には、「親は自分がいちばん好きな歴史上の人物について、話せ」「子どもをなぐることを恐れるな」「男の子に、母親や女の子をいたわることを教えよ」「おじいちゃんがいたから、君がいるんだということを教えよ」「時代を越えて変わらぬ価値のあることを教えよ」などと過激な言葉が並ぶ。
この本は、発売当初から賛否両論を巻き起こし、現在も絶版のまま。私の手元にも1冊しか残っていない。そもそも、私たち兄弟がその通りの教育を受けた訳ではないが、名残りを感じることがある。
スパルタ教育の根本にあるのは、祖先や父母への敬愛の念だ。この点はしっかりと叩き込まれた。幼い頃、お母さんのバカと言ったら、父に思い切り平手で頬を叩かれた。目上の方への非礼があった時は、逗子の家の廊下で立たされた。大理石の床が冷たくてたまらなかった。
『スパルタ教育』には、「子どもの不良性の芽をつむな」「いじめっ子に育てよ」と挑発的な項目がある。
私は小学校の頃、悪ガキだった。悪ガキ同士でグルになって、友人をカーテンの裾にくるんで叩いたり、ボクシングと称してコテンパンにしたりした。見かねた担任は、私と同じく悪ガキだった友人を「留学」と称して1学年下のクラスに送りだした。

