しかし今の日本のように、減税や積極財政が議論され、しかし財源は特に当てがあるわけではなく、将来の経済成長でまかなうのだという政策になると、国債の利払いを確実にしてほしい債券投資家の目にはどうしても危うく見える。起こるかどうか分からない経済成長を前提に「経済が良くなって税収が増えるのでクーポンはきっと払えます」と言われても、投資家は「本当に可能なのか」と懐疑的になります。その懐疑的な目線は、新政権発足後に日本の長期国債利回りが上昇したことで明らかです。

「(高市首相のブレーンは)マーケットをしっかりと見ていないのでは」

 ――高市首相の経済ブレーンを務める本田悦朗氏はインタビューで「日本にはまだ年間十兆円の国債増発の余地がある」との見方を示しています。

 その方はマーケットをしっかりと見ていないのではないでしょうか。そうでもなければ、国債がまだ増発できるとは言えないはずです。

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経済財政諮問会議で発言する高市首相 ©時事通信社

 債務残高がGDPの2倍を超えている日本には、基本的に債券の発行余地はない。この考え方は市場参加者の間では一般的と思います。そういう日本が国債をまだ発行するなら、それがどう日本国債の格付けに影響するのか極めて慎重に考慮する必要があります。

 さらなる国債増発で、ムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズのような大手格付け機関はどう反応するのか、そしてその反応がマーケットでどのように波及するのか。この視点をあまり織り込まず、日本国債の格付けが現状で安定的に維持されるという前提を置いている見方のように聞こえます。

「イギリスでは2022年、財源なき大型減税をぶち上げ、通貨・国債・株価がトリプル安になった」と語る塚口氏(筆者撮影)

 イギリスでは2022年9月、トラス政権が財源もないのに大型減税をするとぶち上げて、英国の通貨・国債・株価がトリプル安になる「トラスショック」が起きましたよね。日本も確かな財源がないまま積極財政を行った場合、市場は同じロジックで反応する可能性が高いのです。

※本記事の全文(約7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(塚口直史「サナエノミクスが『危うく見える』理由 “伝説のファンドマネジャー”塚口直史が語る」)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。
 ・対米80兆円投資でさらなる円安に
 ・12月に市場の調整がある?
 ・ドル暴落でも「笑える」運用

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