「私より、『ひととき融資』みたいなことをしている男性の方が違法なんじゃないですか?」

「どうしてそう思う?」

「別の人の話ですが、警察に被害届を受理してもらえなかったと言っていました。私がやっていたことは結婚詐欺じゃありません。だから犯罪ではありません」

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だまし取った総額2000万円

 りりちゃんに洗脳されていた莉玖は、そんな認識しか持ち合わせていなかった。莉玖の自宅の家宅捜索でりりちゃんから買った詐欺マニュアルが見つかり、りりちゃんも詐欺ほう助の容疑で逮捕されることになった。これが世間に「頂き女子りりちゃん」の存在が知られるきっかけとなった。

 莉玖は起訴されることになった2人の男性を含めて計5人から2000万円を騙し取ったとされているが、ホストクラブで散財していたわけではなく、半分近くは残っていた。こんな莉玖にも本命の男性がいて、その男性が足りない分の賠償金の支払いを申し出てくれたのだ。

「被害者の方に申し訳ないです。これが犯罪だと飲み込むのに時間がかかった。すべての方にお金はお返しするつもりです」

 莉玖は被告人質問でそう申し述べただけでなく、最終意見陳述で「被告人質問では自分の思っていること、傷つけた人への気持ちを十分に話せなかったので、訂正と追加でお話ししたいと思います」と言いながら、ノートを広げ、約25分にわたる大演説を繰り広げた。

「今回やってしまったことには変わりはないし、言い訳をして情状酌量を求めるより、私がどう反省し、今回犯した罪に向き合ったかについてお話ししたいと思います。まずは被害者の方々に深くお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。マニュアルに沿ったことをやっただけで、犯罪をしている実感がありませんでした」

「確かにりりちゃんは私を救ってくれていました。私は公認会計士を目指す学生で、先生と呼ばれる資格に就きたい女の子です。そんな自覚があれば、頭をもう1回転していれば、正しい行いかを考えていれば、りりちゃんの魔法にかからず、頂き女子になることもなかったと思います」