“おぢ”の心を巧みに操り、わずか1人で5人から総額2000万円を詐取──。20歳の頂き女子・松田莉玖(仮名)は、りりちゃん直伝のマニュアルを武器に、日常会話と色恋テクニックの“二刀流”で男たちを追い詰めていった。

「もう闇金とか行こうかな」と嘆けば、相手は自ら財布を開く。巧妙な心理操作で築かれた“2000万円の山”は、いかに作られたのか。令和5年に起きた悪質詐欺事件の手口をお届けする。なお登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/続きを読む

写真はイメージ ©getty

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継父にイタズラされた少女を救ったのは…

 松田莉玖(20)は家庭環境に恵まれなかった。5歳のときに両親が離婚。次いで母親が再婚し、やってきた継父が問題のある男だった。

 わずか5歳の莉玖に性的イタズラを始め、やがて莉玖が成長すると、肉体関係を結ばされた。莉玖は悩み苦しみ、思い切って母親に相談したが、逆に激怒された。

「よくも私の夫を取ったわね。アンタみたいなふしだらな娘はいらない。出て行きなさい!」

 大学1年の冬、莉玖は一人暮らしを始めた。母親には着信拒否され、絶縁された。学費も生活費も自分で稼がなければならなかった。

 そんなときにネットを介して知り合ったのが「頂き女子りりちゃん」だった。

 りりちゃんはパパ活で3億円貢がせたと豪語し、『魔法完全攻略マニュアル』『頂き女子の参考書~お金を頂くための設定と極秘会話法』『みんなを稼がせるマニュアル』といった詐欺マニュアルを電子データで販売。莉玖はこのうちの2冊を2万8000円で購入した。

「これは詐欺にはならないんですか?」

「結婚という言葉を使わず、公的な約束さえしなければ大丈夫だよ」

 りりちゃんからこんなアドバイスをもらい、莉玖はりりちゃんに指南された通りの詐欺を仕掛けていくことになった。

 マッチングアプリに登録し、最初にターゲットにしたのが、会社員のA男さん(43)だった。A男さんを選んだのは、りりちゃんがアドバイスしていた「おぢ」の特徴に合致していたからだ。