一瞬、目を疑った。
〈クマに居間で襲われたか、81歳女性が死亡 全身に多数の傷 岩手〉(「朝日新聞」デジタル版2025年7月4日)
居間? クマが人家に侵入して人を殺したのか……? そんな話はこれまで聞いたこともなかったが、記事はその「まさか」が起こったことを伝えていた。
・4日午前7時40分ごろ、岩手県北上市の住宅で、この家に一人で住む81歳の女性が居間で血を流して倒れているのを女性の息子が発見。
・女性の遺体には、動物の爪によるとみられる多数の傷が頭など全身にあった。
・室内にクマとみられる足跡が複数残されていた。
事故から一週間後の11日、地元猟友会が現場近くで成獣のクマを駆除。DNA鑑定により、女性を襲ったクマと同一個体であることが確認された。
同一のクマが4年の間隔をおいて人を襲った
衝撃的な事故は続く。
7月12日午前2時50分ごろ――北上市でクマが駆除された翌日――今度は北海道渡島管内福島町の住宅街で、新聞配達中だった男性(52)が、ヒグマに襲われて死亡する事故が起きた。このクマは18日に駆除されたが、その後のDNA鑑定によって、2021年に同町の山林で77歳(当時)の女性を襲い、死亡させた個体だったことがわかった。同一のクマが4年の間隔をおいて、再び人を死亡させたケースは過去にない。
環境省によると、令和7年度のクマ類による人身事故の発生件数は62件、被害人数は69人で、うち5名が死亡している(8月末時点)。例年と比べて飛びぬけて多いわけではないが、前出の2件のように、従来の常識では考えられない異常な事故が続いている。
日本のクマに何が起きているのか。

