――佐野選手の存在がボランチの組み合わせに一石を投じている感じですか。

 今後は、佐野と誰か、というのがテーマになってくると思います。ガーナ戦で組んだ田中(碧)は良かったし、鎌田(大地)との相性も良い。ただ、鎌田はサッカーをよく理解しているし、うまいけど、引いたポジションでのプレーを強いられると彼の良さが消えてしまうので、強い相手との対戦の場合どうなるか。

 でも、今は佐野と鎌田がベストかなと思います。遠藤と佐野のコンビは、現実的ではないかな。相手に主導権を握られ、ボールを支配される展開なら可能性はあるけど、同じタイプなので。その前に遠藤は自分のコンディションを戻さないと。リヴァプールでは試合に出られていないので、そういうところでも今は佐野や他の選手と差が開きつつあると思います。

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森保一監督 ©JMPA

「彼が怪我で抜けてしまうと戦術が機能しなくなる」今の森保ジャパンの不安要素

――9月、10月、11月の計6試合を見て、逆に不安を感じた部分はありますか。

 センターフォワードが上田(綺世)しかいないことですね。小川(航基)と町野(修斗)がいるけど、上田とはまだ大きな実力差がある。日本の攻撃は、2列目の得点が主で、そういう選手を配置しているけど、彼らを活かすためには1トップのポストプレーが必須になる。

 でも、小川も町野もポストプレーを含め、流れのなかで2列目を活かすプレーが出来ていない。それが出来るのが今は上田だけなので、彼が怪我して抜けてしまうと、他の選手が良くても戦術が機能しなくなる。そもそも上田だけじゃW杯を戦う上でもキツいので、ここはこれまでもこれからも課題ですね。

――2025年シーズンは、8勝2敗3分けでした。チームの成長は感じられましたか。

 今年は、チームのレベルが2、3段階ぐらい一気に上がったと思います。その要因のひとつは、新しい選手の台頭ですね。鈴木や佐野を始め、中村(敬斗)も、三笘(薫)が不在の間にいいプレーを見せて、今は中村の方が上じゃないかというぐらい評価が高い。

 前はレギュラーとサブの間には大きな差があったけど、今はほとんどなくなった。こうした選手が出てくることでチーム内のレギュラー争いが激しくなり、その結果、主力組のプレーの質もかなり高くなってきた。堂安(律)のパフォーマンスを見ていると、負けられないという気持ちが見えるし、プレー自体も非常に良くなった。競争が個の成長に繋がり、それがチームにも還元されている感じですね。

――日本代表は、強くなったということでしょうか。

 今の代表は、選手が交代で入れ替わってもそれほど差がなく、みんなが同じ方向を向いてプレーできている。戦術の理解度、表現力も格段に上がっていると思います。それに選手層も分厚くなって、日本はどんどん強くなっている。

 ただ、欧州の強豪国と試合が出来ていないですし、メキシコ戦とアメリカ戦以外はすべてホーム。選手はW杯本番と親善試合の違いを理解していると思うので、そこだけは勘違いしてほしくないですが、それにしても今年はいい流れでチームを作ることが出来た。正直、カタールW杯の時のチームよりも今の代表の方が数倍強いと思います。

取材・文=佐藤俊