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思い出される晩年の三浦大輔の姿

 崖っぷちに追い込まれた内海の姿を見て、長くベイスターズのエースに君臨した三浦大輔の晩年を思い出した。今の内海と同じ36歳だった2010年のオープン戦、三浦は巨人打線に8本塁打を打たれ、14失点の大惨事。内定していた開幕投手の座もはく奪された。「三浦は終わった」「ホームラン8本って打たれる方が逆に難しいよ」。チーム関係者の中でも公然とそう話す人物もいた。それでも三浦は自分を信じ、自分に課したルーティンを積み重ねた。登板予定のない日は、ひたすらスタジアムの外周を黙々と走りこんだ(ついでに毎日同じ表情で「ヨ・ロ・シ・ク」と自撮りをブログにアップしつづけた)。「やることは一緒やから」と口癖のように繰り返し、黙々と身体を動かし続けた。そうしてはい上がった三浦は悪夢の8被弾の後に、通算172勝のうち37勝を挙げている。

 三浦と同じように、決して妥協せずに練習を積み重ねてきた内海も、まだまだ一花もふた花も咲かせられるはずだ。

 三浦も内海も打者を力でねじ伏せるのではなく、総合力で勝負するから少しでも歯車が狂うと、滅多打ちを食らうこともある。圧倒的な才能の前に、あっさりと攻略されてしまうこともある。例えるなら、時間をかけて、苦労して作り上げた砂のお城を一気に大波に持っていかれるような感覚。ただ、何度流されても、もう一度砂を積み直せるのが三浦や内海のような選手の強みだ。

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 そして、そのような姿を見ているからこそ、チームメートも力以上のものを発揮するし、その姿勢は誰かに受け継がれ、ひいてはチームの伝統を形作っていく。「孤高」でも「圧倒的」でもない元エースだけが持つ存在価値が、そこにある。

「孤高」でも「圧倒的」でもない元エース・内海哲也 ©文藝春秋

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