「最初の稽古の上りを見て、『これはダメだ』と思いました」
歌舞伎役者が幼少期から積み上げていく舞踊を、わずかな期間で修得できるわけがない。しかし、関係者の証言によれば、ふたりは自主的に稽古の日数を増やしていったという。吉沢亮は初日の舞台挨拶で「僕と流星はひとつの役に、1年半の準備をかけました。なかなか出来ることじゃないです。魂を込めました」と語った。鴈治郎をして「亮と流星は、へこたれへんかった」と言わしめるほどの稽古量だった。
中村が絶賛した2人の演技
さらに、トークショーで鴈治郎は興味深いことを語っている。映画の中で、ふたりは歌舞伎役者にはできない芝居をしているというのだ。
「踊りの中で、お互いがちょっと目配せをする場面があります。歌舞伎役者は、ああいうことはできない。でもふたりはそこに、(役である)喜久雄と俊介の存在をかぶせてくる。あれは僕らにはできない」
中村鴈治郎の言葉を聞く限り、『国宝』のなかで、吉沢亮と横浜流星のふたりは歌舞伎舞踊を踊ってはいるが、歌舞伎では表現できない、「映像表現としての面白さ」を追求したといえるのではないか。
『国宝』における歌舞伎の場面が、時として実際の歌舞伎の舞台以上に興奮を呼び覚ますのは、劇映画という文法の中で、歌舞伎の面白さを最大化させることに成功したからだろう。
市川團十郎が「子どもたちに薦めました」
鴈治郎だけではない。実際に歌舞伎役者たちが映画を見て、続々と反応を寄せた。6月11日には、市川團十郎がXにこう投稿した。
「俳優の方々が、
1年以上も稽古を重ね
撮影に挑む、
そういう姿勢
一つのものに取り組む姿勢。
それにより生まれる世界
そこに人々は共感と感動を観る。
監督はじめ
関係者全ての方々に賞賛。
#国宝 是非ご覧ください。
などと私がいうのは可笑しいですが笑
観てほしい作品です。
歌舞伎役者として思いました
#團十郎
この作品を麗禾と勸玄に薦めました。」
そしてYouTubeチャンネル「KABUKU. / 市川團十郎。」では、自身のふたりの子どもがこの映画を見た後に、ある変化を見せていたと明かした。

