“血のある当事者”からの反応は…

「2人とも御曹司の家に生まれてるわけですよね。血のある家に生まれてる。このドラマの中だと、血のある人間と血のない人間がシーソーのように上がったり下がったりして……」

「観たあとに、少し目の色が変わった2人を見て。本当にありがたい映画だと思った」

歌舞伎界の“血筋”がテーマとなる本作 ©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会

 “血のある当事者”が見ても、心を揺さぶるものがあったのだ。

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歌舞伎の本丸にも“国宝”効果が

『国宝』のヒットの余波は、歌舞伎の本丸にも押し寄せている。

 松竹は10月15日、2026年2月期の連結最終損益が40億円の黒字(前期は6億6400万円の赤字)になる見通しだと発表した。中でも2025年3月〜8月の演劇セグメントにおける劇場運営の売り上げは93億4300万円となり、対前期で18億4600万円増、24.6パーセントの伸びを示した。

 当日、午後2時に上方修正が発表された後、取引時間中だった東京株式市場で松竹の株価が急伸したほどだった。

 このところ、歌舞伎などの演劇事業では、コロナ禍で減った団体客が完全には戻らず苦戦していた。毎公演、歌舞伎座に足を運んでいるが、「この役者の、この演目なのに埋まらないのか?」と感じたこともあった。だが、『国宝』が公開された今年6月以降、歌舞伎座は混んでいる。

歌舞伎座は盛況だという(松竹HPより)

 千穐楽が間近になって、切符を買い足そうとすると、もう手に入らないということもあった。今年は『仮名手本忠臣蔵』、『菅原伝授手習鑑』、『義経千本桜』という三大戯曲の通し上演という好企画があったことも大きいが、これまで歌舞伎に縁がなかったエントリー層も小屋に足を運んでいる。私も、友人や大学の講義の受講生から、

「『国宝』を見たので歌舞伎に行きたいんですが、何を見に行ったらいいでしょう?」

 と、毎月質問されている。

 松竹の関係者は東宝の配給である『国宝』の効果について公に発言することはないが、間違いなく、「TOHOシネマズから歌舞伎座」へのルートが確立されているのだ。

 そして現実として、映画が歌舞伎の演目選定にも影響しているのでは……と思われるケースも登場した。