園による「隠蔽」疑惑

ただ、11月29日の朝、ヒグマとライオンが乱闘するところは、多くの観客に目撃されていた。中央日報によると、「クマとライオンを引き離した直後、ライオンの顔と体は血まみれで、床にも血がべっとりと付着していた」という目撃証言もあったという。

このライオンが、ヒグマとの格闘で受けたダメージによって死亡したことが強く疑われるが、あくまで飼育員は「血は麻酔注射の針を数発受けたクマが流したものだ」と釈明したという。

中央日報をはじめとする現地報道は、責任問題に発展することを恐れた、動物園側の組織的隠蔽ではないかと強く示唆している。

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いくらヒグマの力が強力だと言っても、鉄製の檻やドアを破壊することは考えられない。鉄格子が劣化していたのに、動物園側が放置していたとなると、当然動物園の責任問題に発展する。他の檻の安全性はもとより、動物園全体の管理体制への疑問も生じる。

報道では、晋陽湖動物園の他の檻でも、鉄製の手すりや鉄格子が錆びついて劣化していたという。晋陽湖動物園を訪れた観光客からも、「老朽化が特にひどく、動物たちの管理も適切でないようだ」との証言があった。

結局、隠蔽疑惑について韓国メディアの中央日報が報じたため、動物園側はヒグマがライオンの檻に侵入したことは認めたが、ライオンの死因についての見解は変えなかった。

よって、公式には雌ライオンの死因は「病死」となったわけだが、目撃証言や状況証拠をもとに考えれば、ヒグマの襲撃によって受けたダメージが本当の死因だった可能性が強く疑われる。

背景に「予算不足」と「ずさんな管理」

この「隠蔽」の背景には、動物園の予算不足と、ずさんな管理体制があった。

中央日報によれば、晋州市が晋陽湖動物園に運営費として交付しているのは、飼料費(薬品費を含む)と施設費に1億ウォンずつ、計2億ウォン(人件費除く)程度だった(2025年11月12日時点の為替レートは1ウォン=0.11円)。