このうち、施設費の1億ウォン(約1100万円)は、入場券発券機などのメンテナンス、職員の制服や当直室の寝具購入、売券所の暖房費と公用車の運用費などに使われ、動物の檻の修理に使える予算がなかった。
そのせいか、晋陽湖動物園では、動物が本来の檻と異なる檻に入れられているケースが多いと報じられている。ヒグマとライオンが同じ檻に入れられていただけでなく、象が死んだ後にバッファローが入れられていたり、ライオンの檻にトラがいる、キリンの檻にポニーがいる、といったケースが散見されたという。
晋州市の担当者は「5年ほど前から晋州盤城水木園への動物園移転議論が始まって以来、事実上、動物の檻などの施設修繕は手をつけられていない」と語ったという。
また、こうした状況は晋陽湖動物園に限った話ではなく、2014年当時の韓国全土の動物園はどこも似たような状況に置かれていたとの情報もある。
その結果、動物園において動物が劣悪な環境で飼育され、動物愛護の観点から問題になるという事件も起きていたようだ。京畿道高陽市のテーマパーク「ZOOZOOLAND」において、2013年、トレーナーがアザラシを蹴ったり殴ったりする動画がYouTubeに投稿され、大騒ぎになったこともあった。
日本でも過去に「悲惨な事件」
どこの国でも、動物園が急増するのは高度経済成長期だ。その後、経済成長が緩やかになるにつれ、税収不足から行政が予算削減に走り、動物園設備の劣化や、動物の飼育体制の不安定化が問題になりやすい。
日本でも韓国と同様に、動物園の管理体制の欠陥が悲惨な事件を招いた事例がある。
2016年8月16日午後1時すぎ。群馬県富岡市の「群馬サファリパーク」において、職員が車で園内を巡回していたところ、突然ツキノワグマに襲われた。
巡回車は軽自動車で、窓には猛獣の攻撃から守るためのステンレス製の安全バーが設置されていた。だが、安全バーはツキノワグマの攻撃時に外れてしまい、クマは運転席の窓ガラスを破り職員を襲った。