若年層を中心に爆発的に流行している「MBTI」と呼ばれる性格診断。しかし、ネット上で無料で受けられる診断は「もどき」でしかなく、本来のMBTIとは別ものだと、早稲田大学教授・小塩真司氏は指摘する。(取材・構成 秋山千佳)
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流行っているのは本物ではない
初めに本来のMBTIとはどんなものなのかを説明しておきましょう。
まず、「MBTIもどき」は、自分ひとりでインターネット上に公開されている質問に答えていけば、無料で自分がどのタイプに分類されるのかを知ることができます。その結果を他人と共有したり、会話のネタにしたりすることもできます。
こうした特徴は、ことごとく本来のMBTIとは異なります。
本来のMBTIの診断や運用を実施できるのは、有資格者だけだと国際的に定められています。日本では日本MBTI協会が企業などからの依頼を受けて、有資格者による有料の講習会を受けることを前提としてMBTIを実施しており、誰でも無料で受けられるものではありません。質問項目も非公表です。結果を他の人に見せるものではなく、他者に一方的に提示してラベルのように用いることは適切ではありません。
そもそも、MBTIは性格を診断したり判定したりするために開発されたわけではなく、その本来の目的は、自己理解と自己成長を促すことです。その結果を出発点として、専門家とともに時間をかけて、自分を理解し探求し検証していくためのものであって、性格診断を受けて、「僕は〇〇タイプだから、この職業に就こう」とか「私は〇〇タイプだから、〇〇タイプは遠ざけよう」というように使うものではないのです。
MBTIは1962年、アメリカで、ユングの心理学的タイプ論を基にした性格タイプの指標として生まれました。作ったのは、キャサリン・クック・ブリッグスとイザベル・ブリッグス・マイヤーズという母娘です。MBTIの正式名称は、マイヤーズ=ブリッグス・タイプ・インディケーター(Myers-Briggs Type Indicator)。生みの親である母娘の名前が入っています。なお2人は心理学者ではなく、母キャサリンは教師、娘イザベルはミステリー作家でありつつ、独自に研究を進めていました。米国のパーソナリティ心理学者の間では、性格を16タイプに分類する類型論は適切ではないという批判もあります。
MBTIは、米国内では主にビジネスの世界で人気を保ってきました。特に西海岸のテック企業の研修では今でもよく使われています。
