中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事による「汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」というX投稿が日中間で大きな波紋を広げている。この発言をした薛剣氏とは一体何者なのか。
薛剣氏本人にインタビューした経験を持ち、『戦狼中国の対日工作』(文春新書)を著した紀実作家の安田峰俊氏は「あの人は4年前の赴任当時からずっとそうです」と明かす。(全2回の1回目/続きを読む)
【「汚い首は…」中国・大阪総領事“衝撃ポスト”の背景】SNS投稿は「1日100以上」|対面した際の印象|大阪総領事館はセキュリティが緩すぎる?|戦狼外交官が増えた理由|今後の薛剣氏の処遇【安田峰俊】
(初出:「文藝春秋PLUS」2025年11月16日公開)
「初期はもっとめちゃくちゃでした」
安田氏によると、薛剣氏の過激な発言は今に始まったことではない。
「初期はもっとめちゃくちゃでした」と振り返る。ダライ・ラマやアメリカの政策担当者、日本の政治家などに対して暴言を繰り返してきた。
「首を斬る」発言について安田氏は「今回はだいぶマシなんですよ」と苦笑いを浮かべる。
貧しい農村出身の秀才外交官
薛剣氏は1968年生まれ、高訴省北部の連水県という田舎の貧しい農村出身だ。「村一番の秀才」として北京外国語学院に進学し、外交官養成校とも言える同校で日本語を専攻した。90年代前半から日本の外交関連業務に携わり、2020年まで外交部のアジア局副局長を務めた、いわゆる「日本畑」のエリート外交官である。
興味深いのは、習近平体制以前の薛剣氏の評判だった。安田氏は「中国の官僚がここまで言うか、というほどリベラルな人物」だったと証言する。実際に取材で会った印象についても「ソフトな方です。ナイスミドル」と語り、温厚な人物であることを明かした。
