中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事の暴言投稿で注目を集める大阪総領事館だが、実はこの組織には驚くべき「ゆるさ」があった。
薛剣氏を取材した経験があり、『戦狼中国の対日工作』(文春新書)を著した紀実作家の安田峰俊氏が明かす大阪総領事館の実態は、意外なものだった。(全2回の2回目/はじめから読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2025年11月16日公開)
黒タイツの魅力に「いいね」
安田氏によると、大阪総領事館のセキュリティ意識は「民間企業だったら終わり」というレベルだった。秘書の女性職員はFacebookに鍵をかけておらず、「彼氏にプロポーズされた日とか、プロポーズ場所とか彼氏の名前とかを全世界に公開して」いたという。
さらに薛剣氏本人も、中国のSNSで「お姉さんの黒タイツの魅力、みたいなものにいいね」をつけるなど、外交官としては考えられない行動を取っていた。
極めつけは、新疆ウイグル自治区のプロパガンダツアー参加者募集の際、「総領事館がBCCじゃなくてCCにしていて、参加者全員の個人情報が全部見えて」しまったという杜撰な管理体制だった。
アニメ・萌え系の投稿が中心だった
薛剣氏が赴任する前の大阪総領事館公式Xアカウントは、他の中国外交機関とは一線を画していた。
「萌え画像ばかりアップしたんですよ」と安田氏は振り返る。新型コロナウイルスを女性に擬人化した投稿や、神戸の動物園のパンダをケモノ美少女にするなどの内容が続いていた。
プロフィールにも「フォローしてね」の後にハートの絵文字が入り、他領事館の運営とは対照的な「独自路線」を貫いていた。これは部下の職員が担当していたためで、政治的な内容は「何一つつぶやかず」、アニメ・萌え系の投稿が中心だったという。

