イギリスで起きた史上最凶の連続殺人事件。フレデリック&ローズ・ウェスト夫妻は、自宅「恐怖の館」に女性や実子を誘い込み、凌辱・拷問の末に12人を殺害、遺体をバラバラにした。歪んだ家庭環境と倒錯した性癖、そして互いを補完するような凶行の連鎖。いったい2人はどんな人物だったのか? 文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/続きを読む)
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12人を殺害した夫婦
1970年代を中心に、イギリスで12人を殺害した夫婦がいる。イングランド・グロスターの自宅である通称「恐怖の館」で、下宿人の女性や実の娘を徹底的にいたぶり殺害した挙げ句、遺体をバラバラにしたフレデリック&ローズマリー(通称ローズ)・ウェスト。彼らが起こした一連の犯行は世界犯罪史上でも類をみないほど凄まじく、まさに鬼畜の所業と言うよりない。
常識では考えられない事件を起こす人物には複雑で歪な成育歴を持つ者が多く、フレデリックとローズもまた例外ではない。
「妹たちを毎日のように犯していたんだ」
フレデリックは1941年、イングランドのウェスト・ミッドランズに位置するヘレフォードシャー州マッチ・マークル村に、6人兄弟姉妹(弟2人、妹3人)の長男として生まれた。ウェスト一家は農作業を生業としていたが、その家庭環境は常軌を逸するものだった。後年、フレデリックは語っている。
「親父は俺の妹たちを毎日のように犯していたんだ。風呂から出てきたところを捕まえてタオルを剥ぎ取り『俺がおまえたちを作ってやった。だから俺にはおまえたちとやる権利がある』ってね」
父ウォルターの言葉は後年、フレデリック自身の口癖となるが、母デイジーもまた狂っていた。「村のみんながそうしている」と、フレデリックは12歳のとき、母から性の手ほどきを受ける。早い話、近親相姦が日常化していた一家だったのだ。
それは親子間のみならず、兄妹の間でも常態化し、フレデリックは1961年6月、19歳のときに13歳の妹キティを犯し妊娠させた罪で逮捕された際、「みんなやってることだろ?」と不思議がり、結局無罪になっている。ちなみに、前年の1960年、フレデリックはバイク事故で頭を強打してから、それまでの「蝿も殺せない、大人しいいじめられっ子」キャラが、突発的に癇癪を起こす激情型へ変貌したそうだ。
