1970年代、イギリスで凶悪な連続殺人事件が発生した。フレデリックとローズ・ウェスト夫妻は、歪んだ家庭環境と異常な性癖により、自宅で女性や子どもを次々と犠牲にした。その凶行は互いに補完し合うかのようにエスカレート。複雑な生育歴と倒錯した欲望が重なり、12人を殺害する世界犯罪史に類を見ない恐怖の連鎖が生まれた。「夫婦の出会い」から「最初の殺人計画」までを、文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/続きを読む

写真はイメージ ©getty

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妻との出会い

 1968年11月28日、27歳のフレデリックはグロスター・チェルトナムのバス停で当時15歳になったばかりのローズと運命的な出会いを果たす。

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 といっても、当初、ローズは自分とは一回りも歳が上のフレデリックを気味悪がった。薄汚れた仕事着のまま同じバスに乗り込んできて、一緒にどこかに行かないかと誘ってくる。もちろん、断った。が、明くる日も明くる日もフレデリックはバス停で待ち、デートに誘ってきた。

 あまりのしつこさに根負けするか、ストーカー扱いして二度と会わないようにするか。果たしてローズの選択は前者で、ほどなくフレデリックと肉体関係を持ってしまう。彼女もまた性的モラルが欠如した家庭で生まれ育っていたのだ。