披露宴の開宴2時間前にスタッフミーティングを行う。司会は当時『スーパーニュース』でご一緒していた、フジテレビアナウンサーの須田哲夫さんと西山喜久恵さんにお願いした。式場を走り回るアシスタントディレクターやフロアディレクターもいつも番組で顔なじみの人ばかり。そして僕はプロデューサーであり監督であり主演男優だ。
ぶっつけ本番の一発撮りの2時間ドラマの撮影と言う覚悟で式に臨んだ。僕はテーブルの上の進行表をながめ、時間が押してくるとフロアディレクターを呼んでテレビ局の社長だろうが大学医局の教授だろうが、渡哲也さんの祝辞にも巻きを入れた。
「もっと宴を楽しめる席を確保しろ」
もう一つの指令は、親父の席。披露宴の主役は花嫁花婿。そして祝ってくれる招待客の皆さん。親兄弟はそれを遠くから見守ると相場は決まっている。しかし親父は、自分の宴席が端っこなのが気に入らない。もっと宴を楽しめる席を確保しろという。
伊勢路であれだけ一緒に楽しく盛り上がった仲なのだから、赤坂でも一緒に盛り上がろうと僕も覚悟を決めた。
両家の主賓席の第一テーブルや第二テーブルになんてケチなことは言わない。どうせなら正面の花嫁花婿が並ぶ高砂テーブルに一緒に並んでしまえばいい。下手から稲田家のご両親、花嫁、花婿、石原家の両親という、六名が横一列に長いサミットの記者会見のような高砂テーブルが出来上がった。招待客の皆さんはどう思われたのだろうか。「慎太郎さんの家なら、さもありなん」と親父を知る人は理解できたかもしれないが、「なんと非常識な」と新婦側の皆さんは驚かれたに違いない。
しかし、その光景を見て一番慌てたのは当の親父だった。親父の感性をもってしても、これはいささかやり過ぎと感心したようだ。僕は親父に呼ばれ、この席次の事と次第を僕の口から皆さんに説明するようにと釘を刺された。
稲田の父にエスコートされ花嫁が入場してくる。待ち受ける花婿の僕に花嫁は受け継がれ、二人揃って高砂の席へ向かい六人で着席する。そこで僕のマイクアナウンス。