2023年2月、スカウトグループ「ナチュラル」に所属していた男性A(当時30)は、新宿区歌舞伎町のマンション等で肛門にディルドを入れられるなどの性加害を受け、さらに暴行による怪我を隠すために8日間にわたって監禁された。

 この常軌を逸する暴行を主導したのは、同グループの幹部だった兼子エディ被告(32)。強制わいせつ致傷と監禁の疑いで逮捕され、今年11月28日には東京地裁で懲役6年の有罪判決を受けた。

 判決では「見せしめとして、組織による私的制裁が行われたもので、全体として悪質」と、その犯行の悪質性が厳しく断罪された。裁判の証言などでは、巨大スカウトグループ「ナチュラル」の実態とあまりに苛烈な“私刑”の内容が明らかになった。

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東京地方裁判所

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「ナチュラル」は、日本最大のスカウトグループと言われる。その組織は運営部門と、実際に街頭で女性に声をかけるスカウト部門から構成される。

 風俗店などで働く女性を見つけて店舗に紹介することで「スカウトバック」と呼ばれる報酬を得る組織で、歌舞伎町や渋谷、池袋といった都内だけでなく、北海道から広島まで全国の繁華街で活動していた。

「クスリをしてはいけない」などのルールを破ると「私的制裁」も…

 Aの証言によれば、独自のコミュニケーション・アプリに登録されたアカウント数から構成員は1000人以上、年間の総売上は40億~50億円にのぼるという。

 構成員は「班」と呼ばれる階層的なグループに所属し、その内部では厳格なランク付けがされている。新人の「研修生」から始まり、「契約社員」「正社員」と昇格し、さらに「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」といったプレイヤーランクが存在する。地位が上がれば収入も増え、兼子被告は事件前の月収が500万円ほどだったと証言した。

 しかし、その高収入の裏には厳しいルールとそれを破った者への苛烈な制裁が存在した。「女性に無理やり紹介しない」「クスリをしてはいけない」といった組織全体の禁止事項に加え、班ごとにも「従業員同士のギャンブル禁止」などの独自の規約があった。違反者には罰金だけでなく暴力や、今回の事件のような強制わいせつ行為という名の「私的制裁」が加えられることもあった。