事件の加害者である兼子被告と、被害者のAは中学2年生の頃からの遊び仲間だった。高校受験の塾もアルバイト先も互いに紹介しあう仲で、親にも言えない恋愛の相談をするほど親密だった。兼子被告はAをナチュラルに誘い、自らが代表を務める班の幹部補佐に抜擢。「Aの言葉は俺の言葉と思って聞くように」と周囲に公言するほど信頼していた。

 しかしAがオンラインカジノにのめり込み、班の経費を使い込んだ上、従業員から借金をしていたことが発覚したのをきっかけに、関係は一気に悪化。それは、兼子被告が自らの班に対して禁止していた行為だった。

 Aの裏切りを知った兼子被告は激怒し、スマートフォンのアプリで「制裁メモ」を作成している。そこには「坊主」「給与カット」「裸写真」「ディルド動画」「親に会いに行く」といった、これからAに行うおぞましい制裁の数々が記されていた。

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 2023年2月17日、出張先から戻った兼子被告は、幹部に「ディルド、用意して」と電話で指示し、Aが待つ歌舞伎町のマンションへ向かった。兼子被告はこの電話の意図を「自分がヘラヘラせず、ブチギレていると伝えたかった」と語っている。

「意識が朦朧とした。ディルドにローションをかけていた」

 午後10時半ごろ、マンションの一室に到着した兼子被告は、Aを見るなり顔面に蹴りを入れたという。Aは当時の状況をこう証言する。

「エディが入室し、いきなり、自分めがけて顔面に蹴りを入れられた。鼻血が出た。その後、ゲンコツで殴られたり蹴られたりした。防御のために頭を抱えるようにした。暴行には道具も使われ、キッチンにあったフライパンのほか、新聞紙を丸めてビニールテープで固めて、硬く短い棒状の凶器にしたものも。棒状のものはものすごく痛かった。顔をガードしていてもしなるので顔に当たった」

今年1月下旬、「ナチュラル」関係先を家宅捜索する警視庁捜査員 ©時事通信社

 暴行が続く中で、兼子被告は室内にいた幹部に「あれ、持ってきたか」と尋ね、「裸になれ」「これをするまで終わらないぞ」と迫った。

 上半身の服は脱いだものの、わいせつ行為を受け入れられなかったAは、下半身は着衣のまま抵抗を続けた。すると、兼子被告はAの体にサラダ油をかけ、ライターで火をつける仕草をして脅した。

 兼子被告は「てめえ、ふざけんなよ」などといいながらさらに暴行をくわえ、Aは次第に反抗する気力を失っていった。

「意識が朦朧とした。X(別の幹部)がディルドにローションをかけていた。それを漠然と見ていた。ただ、拒否し続けていたが、心が折れてしまった」(Aの証言)