「いつまで開発を続けるのか」「こんな商品は売れない」と酷評
開発は「サラダ」と「チーズ」という2種類の味を念頭において進めた。サラダは調査から浮かんできた消費者の要望で、チーズは開発陣の希望だったという。当初は「うすしお」も候補にあってテスト販売も行ったが、同社の看板商品である「ポテトチップス」のイメージが強く、後に外れた。
サラダ味といえば、パセリとニンジンの粒が入っているのがじゃがりこの大きな特徴だが、当初はこれに加えてコーンも検討していた。しかし「じゃがいもと同じ黄色だから目立たず、コスト的にも合わないため除外しました」と、開発を担当した山崎裕章さんは振り返る。
じゃがりこといえば「固さ」も大きな特徴だ。この食感には、新商品開発に対する当時の経営陣から寄せられた「じゃがいもを主原料としたスナック菓子を作る」というオーダーが影響している。
「カルビーが最初に飛躍したきっかけは『かっぱえびせん』ですが、中興の祖である『ポテトチップス』もそうですし、『サッポロポテト』などじゃがいもとの縁が深いんです。そこで、新たにじゃがいものスナック菓子を作りたい意向がありました」(山崎さん)
小麦粉などのつなぎを極力つかわず、じゃがいも100%で――。このコンセプトに則って開発を進めたものの、難航する。じゃがいも100%で試作したところ、非常に固い食感になってしまったのだ。
そこで、山崎さんら開発チームは、粉末油脂や乳化剤などを加えつつ、食感を調整していく。半年以上にわたり、毎日5つほどの試作を繰り返していった。「正直、『いつまでこんなことやっているのかな』と思うほど、出口の見えない日々でした」と振り返り、十二指腸潰瘍を患うほどの心労を抱えた。
市場調査でも消費者からの反応は厳しく「固い。味がしない」という意見が多かった。一口食べて、残されるケースが相次いだという。社内の評価も高いとはいえず、特にカルビー創業者の松尾孝氏(当時の名誉会長)からは「こんなに固い商品は売れない」とまで言われた。
「創業者から直接ダメ出しを受けたことはありませんが、『いつまで開発を続けるのか』と指摘されていたと、あとから聞きました」と山崎氏は語る。他の役員たちのフォローがなければ、開発は中止されていた可能性もあった。当時のスナック菓子といえば、「かっぱえびせん」や明治の「カール」など、サクサクとしたソフトな食感が常識。そんな中、じゃがりこの固さは異質だったようだ。
