じゃがりこの前身商品「じゃがスティック」とは?

 転機は、商品の完成より先に販売日が確定したこと。「完璧な商品を待っていたら販売できないまま終わっていたかもしれない」と山崎さんは振り返る。

 社内外で評価が低かった商品がテスト販売に至った背景には、当時のコンビニ業界の動きも影響した。1990年代は、コンビニ各社が独自性の高い商品を求めてメーカーとの協業に力を入れていた時期だ。あまりの不評に落胆しながら、ダメもとで某コンビニに試作品を持ち込んだところ「他にない商品で面白い」と興味を示され、テスト販売が決まった。

 そうして1994年2月、じゃがりこの前身となる箱型包装「じゃがスティック」として、コンビニ14店舗でテスト販売された。

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じゃがりこの前身商品「じゃがスティック」

 じゃがスティックは、当時のカルビーでは初となる箱型包装の商品だったことから、これまでにない商品だったため、発売してからもさまざまなトラブルに見舞われた。現行のじゃがりこと比較して1本当たりが長かったこともあり、スティックが折れたり、曲がったりしたほか、油が箱に染み出すなどして、製造ロスが全体の半分以上に達する日もあったという。

 それでもテスト販売の結果は上々で、プロモーションを実施しなかったにもかかわらず、安定した売れ行きを見せたことから、正式販売へと進んでいった。さまざまな改良を施し、1995年に「じゃがりこ」として販売がスタートした。

 じゃがスティックでは四角柱だった形状を円柱に変更し、スティックを短くして製造ロスを削減したほか、箱型からカップ型への転換を決めた。カップ型にしたことで、フタを開けるだけですぐに食べられるという利便性を向上させた。

1995年に発売したじゃがりこ

 じゃがりこはいきなり全国で展開するのではなく、エリアを絞って販売を開始している。広告予算が都心部より低く抑えられることや、工場からの距離を基に販売先を選定し、まずは新潟で先行販売を行い、次いで長野に拡大。その後、全国展開へと広げていった。

 余談だが創業者の松尾氏は、自身が一度は否定したじゃがりこの成功後、自らもじゃがいもにこだわった商品を作ろうと私財を投じて東京・駒込に研究所を設立。80歳を超えてなお、商品への執念を燃やし続けた。そこから、北海道土産として人気商品となった「じゃがポックル」も生まれている。