現在、「片目シンガー」として活動し、今年8月にメジャーデビュー曲をリリースしたかたのめいさん。彼女は19歳の時にアルバイト先での事故で左目をほぼ失明した。そのつらい体験と、それを乗り越えていった過程を語ってもらった。
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「眼球が破裂してしまっていた」専門学生時代の壮絶な事故
かたのめいさんは専門学校1年生の1月、居酒屋でのアルバイト中に事故に遭った。掘りごたつの席で足を踏み外し、バランスを崩した際に顔と壁の間にグラスが挟まれる形となった。
「グラスが割れて左目に刺さりました。さらに、壁にぶつかった衝撃で掘りごたつの中に落ちて、『何が起こったんだろう』って感じでした」
眼下あたりから生ぬるい血がたくさん流れていたという。病院で診察を受けた結果、眼球が破裂してしまっていた。眼球を縫う手術と、その1週間後に網膜の手術を受けた。
「見た目はなかなかグロテスクな感じでしたね。まぶたにはアザが残り、眼球には分厚い“かさぶた”のようなものができて、まるで左目が肉の塊に覆われているみたいで。手術で水晶体を取ったためか、瞳の色も変わっちゃって。自分でも目を背けたくなるような状態だったんです」
医師から「あなたの左目は、元のようには戻りません」と宣告され…
医師からは「もうあなたの左目は、元のようには戻りません」「見えるようにはなりません」と宣告された。
「それまでは泣くと目が痛いから、泣かないようにしてたんですけど、その時はさすがにこらえきれなくて。病院のフロア中に響くぐらい、泣きわめいてしまいました」
入院から1か月後に退院。その後は眼圧を安定させるために下を向いて過ごすよう指示されていたという。
退院後、片目での生活に苦労した。距離感が掴めず人とぶつかることが多くなったり、文字が書きづらくなったり、アイラインを引くこともできなくなった。
「今までできていたことが、できなくなって。『両目だからできていたことって、こんなにあったんだ』とびっくりしました」
「人前に立つ仕事では、この見た目は強みだな」現在は歌手として活動中
当時は「誰も私の辛さをわかってくれない」と思い込んでいたという。そんな中、入院中に病室で浮かんだ「貧困で苦しむ子どもたち」の映像がきっかけとなり、「この怪我はギフトなんだ。同じように困っている人を助けるためにもらった試練なんだ」と考えるようになった。
その後、世界各国を旅して様々な経験を積み、今では「片目シンガー」として活動している。メジャーデビュー曲「Croissant(クロワッサン)~欠けた世界で気づけたもの~」をリリースし、SNSでも自身の体験を発信している。
「今は『この見た目だから、覚えてもらいやすくてラッキーだな』と思っています。特に人前に立つ仕事では、この見た目は強みだなって」
自分自身が見た目に振り回された経験があるからこそ、「見た目で判断しない、誰もが生きやすい世界になるといいな」と願っている。
撮影=三宅史郎/文藝春秋
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