隧道を過ぎて振り返ると…
この隧道を見て、私は「実に房総らしい」と感じた。房総には、こうしたイビツな形をした隧道や、人力で掘っただけで土がむき出しの素掘り隧道など、簡素な隧道が非常に多い。房総半島は隧道半島と言っても過言ではないほどだ。地形や地質、人口など様々な理由がそうさせているのだが、国道でありながらも簡素な隧道に、房総らしさを感じずにいられなかったわけだ。
隧道を過ぎて振り返ると、やはり異様な形をしている。反対側と断面が異なり、ほぼ四角形に近い形状をしている。トンネルは通常、強度を確保するために円を描くアーチ構造で造られることが多いため、四角い形はとても違和感がある。
隧道を過ぎると、ほどなく2車線の立派な国道410号となる。国道410号は鋭角に右折し、その先で既述のバイパスと合流する。この付近の国道は非常に複雑な線形をしており不思議で面白いので、気になる方はぜひ地図で調べてみてほしい。
首都圏唯一の酷道である410号は、以前はもっと酷道区間があったのだが、近年道路の改良が進み、酷道と呼べるのはこの区間だけになってしまった。そもそも酷道は道路整備が進むにつれて減っていくため、いずれは消滅する運命にある。そうした儚さもまた酷道の魅力だと思うようにしているが、あるうちに行っておかないと後悔するかもしれない。ただし、実際に酷道を走る際には、既述の通り安全運転は絶対条件であることをお忘れなく。
酷道は、普通に考えれば走りにくい不便な国道なのだが、昔ながらの風情を残し、いずれは消えゆく国道だと思えば、少しは愛おしくならないだろうか。東京都から最も近い酷道410号も、いずれは全線が走りやすい普通の国道になるだろう。利用者からすれば当然そのほうが良いのだが、複雑な思いを抱えつつ、今後も見守っていきたいと思う。
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