“酷道”という言葉をご存知だろうか。「こくどう」といえば、多くの人は「国道」を想像するだろう。国道は日本に数ある道路の中でも最上位に分類される、いわゆる“いい道”の代表格だ。しかし、整備が行き届いたイメージとは裏腹に、道幅が狭く対向車とすれ違うことができなかったり、ガードレールがなく一歩間違えれば崖下に転落してしまうような国道も少なからず存在している。そうした状態が酷い国道のことを、親しみを込めて“酷道”と呼んでいる。

国道152号

 国道は全部で459路線あるが、そのうち酷道と呼べるものは60路線あまり。世の中には、あえて酷道を走るために全国を駆け回る酷道マニアも存在している。私もそんな物好きの一人だ。

かつて“危険 落ちたら死ぬ!!”看板が設置されていた国道157号

首都圏に存在する酷道はただ1つ

 酷道は様々な理由で生まれるが、その性質上、山間部に集中しており、東京都には酷道は1つも存在しない。首都圏一都二県に範囲を広げても酷道は1路線のみだ。

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 そんな首都圏唯一の酷道は、千葉県館山市を起点に、房総半島を縦走して同県木更津市までを結ぶ国道410号の中にある。

 房総半島は海に囲まれており、内陸部は山が多く起伏に富んだ地形をしている。酷道が存在するための条件が揃っているのだ。国道410号の酷道区間は決して長くはないものの、房総半島らしさが感じられるとても“良い酷道”だ。