日本の防衛政策はどうあるべきか

 この事態を受けて、日本の防衛政策はどうあるべきなのか。神保氏はこう述べる。

〈日本が優先すべきは、日米拡大抑止協議を通じて、有事における米国の核運用に関する意思決定プロセスに深く関与できる制度を整えることです。あわせて、北東アジアの戦略環境に適合したかたちで米国の核体制を維持し、抑止の信頼性を高める仕組みを構築することが不可欠です〉

 この神保氏の意見に同意しつつ、小黒氏はこう疑問を呈する。

ADVERTISEMENT

〈同感ですが、ただ実際に米国が日本のために核を使うという決断をするには、ハードルが相当、高くないですか。例えば、中国の最新鋭のSLBM「巨浪3」は、射程が1万2000キロで米国本土を核攻撃できます。そんななかで、中国が日本を核攻撃した場合、米国が自国民を危険にさらしてまで日本を守るのか。大いに疑問です〉

原子力潜水艦 ©時事通信社

 元陸将で、自衛隊の「南西シフト」の現場を知る用田和仁氏は、こう断言する。

〈米中露の大国間秩序が主流になれば、ウクライナのような「緩衝国」とみなされる可能性がある。だからこそ、日本は「米国の核の傘」をあてにするのではなく、自前で「核保有」すべきです〉

〈ウクライナ戦争が始まる直前、バイデン大統領は、「米国はロシアと直接、砲火を交えない」と述べました。核戦争を避けるため、という理屈ですが、そうであれば同じ理屈で米国は北朝鮮や中国とも戦わないはずです。マクナマラ国防長官、キッシンジャー国務長官などは退官後に「同盟国を守るために他の核保有国と戦争することはない」と言っています。日本に残された選択肢は、(1)中国の軍門に降るか、(2)劣勢のまま通常戦力で戦って国を滅ぼすか、(3)核を保有し自立するかの三択しかない〉

用田氏 ©文藝春秋

 神保氏、小黒氏、用田氏の3氏が、日本の安全保障環境の現状を踏まえつつ、タブーなしに「核」について徹底議論した「中国には核保有も選択肢だ」の全文は、12月10日発売の月刊「文藝春秋」1月号及び、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されている。

※2年目から通常価格の10,800円(税込)で自動更新となります。 ※お申し込み画面で年額プランをお選びいただき、プロモーションコード「NHRG9MBPM6」をご入力いただいても同じ割引が適用されます。

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】前駐中国大使が渾身の緊急提言! 高市総理の対中戦略「3つの処方箋」/霞が関名鑑 高市首相を支える60人/僕の、わたしの オヤジとおふくろ

2026年1月号

2025年12月10日 発売

1550円(税込)

Amazonで購入する 目次を見る
次のページ 写真ページはこちら