「パンツ1枚で……」実際にあった危険なケースとは?

 とくに男性宅への訪問については、現場でマニュアル作成が進む。

 兵庫県で訪問看護事業所を運営するAさんによると、男性宅への訪問においては一定のリスクを見越した上での研修や、マニュアル作成を行っているという。とはいえ、Aさんがマニュアルを作成するようになったのはここ5年くらいの話だ。

 それまではハラスメントの概念があまり浸透していなかったこと、それとともにどうしても利用者を「お客さま」として見る雰囲気があったため、相手に要求されることに対して、どこまで対応すべきかの判断が難しかったのだという。

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 Aさんは過去、実際に見聞きしたケースとして、訪問先で差し出された飲み物に睡眠薬が入っていたことがあったと話す。その他、利用者から自作のジュースを出されたこともあった。暑い日などはお茶を出されることもよくあるというが、今は全て断る。相手が善意で出していることがわかっていても、断ることで相手が不機嫌になることがわかっていても、断るしかないのだ。

訪問看護の現場、特に男性宅の訪問ではマニュアルの作成や研修の整備が進むという 画像はイメージ ©mapo/イメージマート

 男性利用者の自宅を訪問すると、玄関口でパンツ1枚で待たれていたこともあったという。その状態で、ベッドで隣に座らせられたり、後ろから抱きつかれたりするケースもあった。こうした実際にあったケースを基にマニュアルを整備し、看護師の安全と適切なケアがなされる環境整備が進んでいる。

法廷で流れた、悲惨すぎる「現場の音声」

 裁判に話を戻そう。

 証拠として、被告人が女性を切りつけた後の通報時音声が流された。女性から被告人に受話器が渡されたところから、音声は始まる。被告人と警察の会話から、現場に警察が突入するまでの一部始終は、悲惨なものだった。