2025年4月、大阪市西成区で86歳の男性が、訪問看護で自宅に来た20代の女性看護師の手を包丁で切りつけたのち、そのまま包丁を差し向け続け、家から立ち去ることが困難な状態にしたとして傷害罪、監禁罪の疑いで逮捕された。
男性は粗暴犯としての前科があり、事件の7年前には包丁を使った強盗未遂などの罪で有罪判決を受けていた。事件当時生活保護を受けていた被告人は、取り調べによると「こんな生活もうイヤや」という思いで、「警察に捕まりたい」「監禁されていると通報しろ」と被害女性に無茶な要求をし、拒否されたことから切りつけたという。
その傍若無人な暴れっぷりは、事件現場のみならず法廷でも散見された。同事件の裁判を傍聴したライターの普通氏が、詳細をお届けしていく。(全2回の2回目/最初から読む)
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時にはよろけ、耳が遠く「80代相応」の穏やかな姿に見えたが……
法廷に現れた被告人は穏やかなようすに見え、立ち上がる際は少しよろけたり、裁判所から貸与される補聴器がないと耳が聞こえにくかったりと、80代という年齢相応の男性の印象を受けた。
しかし、何か気にさわると急に怒ったような口調でまくし立て、独自の主張を展開し続けるため、裁判官からたびたび注意を受けていた。
例えば裁判の冒頭で傷害罪、監禁罪の認否について問われると「裁判所に言えることを待ちに待っていた!」と言葉を張り上げ、堰を切ったように話し始めた。口調はさまざま変化し、諭すような口ぶりもあれば、事件当時を思い起こしたのか怒る様子をみせるなど落ち着きがない。
結論としては、傷害罪は認め、監禁罪については争う趣旨なのだが、事件日の被害者のちょっとした言動に立腹していたと話す。また、被害者の負った傷の重さに納得がいかないこと、警察の取り調べへの不満などを勢いよく供述する。
途中、裁判官が制止しようとするものの、まるで聞く様子がなく、今後の裁判の進行が不安になっただけでなく、日ごろの訪問看護に関してもその苦労が目に浮かぶようであった。
