静かな山間の集落で、血まみれの3人と、頭蓋骨がむき出しの遺体──。少女の失踪を伴う凄惨な事件はなぜ起きたのか? 世界中のコールドケースを取り上げた文庫『読んで震えろ! 世界の未解決ミステリー』(鉄人社)から、その全貌を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む

写真はイメージ ©getty

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山小屋で「血まみれの3人」が発見

 1981年4月12日、米カリフォルニア州プラマス郡ケディに住むシーナ・シャープ(当時14歳)が、教会の日曜礼拝に行くための着替えを取りに、前日に泊まった友人の家から朝方7時ごろ自宅に戻り、驚愕の場面に遭遇した。リビングの床に母グレナ(同36歳)、兄ジョニー(同15歳)、ジョニーの友人のダナ・ウィンゲート(同17歳)の3人が血まみれで倒れていたのだ。

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 動転したシーナは急いで友人宅に引き返し、警察への通報を依頼する。

 グレナはもともとコネチカット州に住んでいたが、暴力的な夫から逃れるため、1979年7月に5人の子供を連れて家を出た。その後、実弟が住む北カリフォルニアで1年4ヶ月を暮らし、1980年11月、3つのベッドルームを完備するケディの山小屋「キャビン28」を借りる。当時のケディはリゾート地としての顔を持つ一方、殺人犯や性犯罪者が隠れ住んでいるとの噂が絶えない場所だった。

 しかし、雄大な自然のもと、グレナは伸び伸びと、長男ジョニー、長女シーナ、次女ティナ(同12歳)、次男リック(同10歳)、三男グレッグ(同5歳)と田舎暮らしを満喫する。が、穏やかな暮らしはわずか半年で終わりを遂げる。

 通報を受けた警察はすぐに現場に赴き、3人の死亡を確認するとともに、屋内から血のついたナイフ2本とハンマー1本を押収する。遺体は惨状の極みだった。

写真はイメージ ©getty

 ソファの近くで上半身裸で横たわり、医療用テープと電気コードで体を縛られたうえ、自身の下着で猿ぐつわをされた状態で見つかったグレナは胸と喉を何度も刺されており、喉の傷は喉頭を貫通し背骨まで達していた。

消えた少女の行方は⋯

 一方、ジョニーとダナはハンマーで頭部を何度も殴打されており折れた頭蓋骨がむき出しの状態。現場に荒らされた痕跡や盗まれた金品がなかったことから、よほど深い恨みを持つ者の犯行と推定された。

 また、次男リックと三男グレッグ、前日からシャープ家に泊まっていた彼らの友達のジャスティン・スマート(同12歳)は寝室で無事だったものの、次女ティナの姿だけがどこにもなかった。警察は彼女が拉致された可能性もあるとみて、その行方を追うとともに、殺人事件として捜査を開始する。

 ほどなく、ジャスティンから重要な目撃証言が得られる。

 夜中に物音がして寝ぼけ眼でリビングルームを覗いたところ、グレナが2人の男と口論しており、そこに入ってきたティナが男の1人に屋外に連れ去られたのだという。

次の記事に続く 「消えた少女の骨」が発見、「被害者の不倫相手が犯人」の新証言も出たけれど⋯男女4人が殺される残虐事件が『未解決』に終わったワケ(海外の事件・昭和56年)

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