夫は「やり取りしていただけで、浮気をした訳では……」と弁明
私は続けました。
「それで、マッチングアプリで女性とやり取りしていたのは事実なんですか?」
勇一さんは妻の様子を見ながら、答えました。
「それは、事実です。本当に申し訳ないと思っています。ただ、やり取りしていただけで、浮気をした訳では……」
その言葉を遮るように、美由紀さんが言いました。
「そんなの、信じられる訳ないじゃない。あなたからホテルに誘ってるメールもあったんだから!」
「それはやり取りだけで……冗談というか、遊びというか」
夫婦関係は決して悪くなかった
事実をはっきりさせるのは難しそうだな、と私は思いました。浮気を否定する夫の中には嘘をついている人もいるし、本当に浮気をしていない人もいます。ですが、カウンセリングはその事実を明らかにする場ではなく、夫婦間に起こっている問題を解決する場です。
美由紀さんには、事実を明らかにするのは難しいことを納得してもらうしかありません。ただ、それは追々のこと。ですので今度は私から切り出しました。
「一番の問題は、どうして勇一さんがそんな事をしてしまったのか、その原因を知って、今後繰り返さないようにする方法を見出すことですね」
美由紀さんは2度頷きました。
「夫婦関係は悪くない、というか良いほうだと思っていたので、私はどうして夫がこんな事をしたのか、それが知りたくて、ここに来たんです」
美由紀さんの希望もあり、まず勇一さんのカウンセリングを始めました。ですが、その前に夫婦関係について勇一さんに尋ねました。
「夫婦仲は美由紀さんの言う通り、良かったんですか?」
勇一さんは頷きます。
「仲は良い方だったと思います。周りからも『仲いいね』といつも言われていました。子どもに留守番させて2人でランチに行ったり、カフェに行ったりしていましたし」
子どもは高2の男の子、中2の女の子、小5の女の子の3人だそうです。
